MCIの認知機能改善に、最適な運動とその量は?~ネットワークメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/13

 

 軽度認知障害(MCI)は、認知症の前駆段階であり、通常の老化による認知機能低下よりも進行することが特徴である。高齢MCI患者における機能低下の抑制、認知機能向上に対する有望なアプローチとして、運動介入への期待が高まっている。しかし、最適な運動様式とその量(用量反応関係)に関する研究は、十分に行われていなかった。中国・大連理工大学のYingying Yu氏らは、用量反応関係を最適化し、十分な強度を確保し、ポジティブな神経学的適応を誘発することによりMCI患者にとって最適な運動様式を特定するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月12日号の報告。

 対象は、MCI患者に対する運動介入の有効性を評価した研究。2024年4月15日までに公表された研究を、PubMed、Embase、Scopus、Web of Science、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどの電子データベースより、システマティックに検索した。主要アウトカムは、全体的な認知機能および実行機能とした。ペアワイズおよびネットワークメタ解析の両方で、ランダム効果モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・包括基準、除外基準を適用し、42件(2,832例)の論文をネットワークメタ解析に含めた。
・有酸素運動にさまざまな要素を組み合わせた身体活動であるマルチコンポーネント運動は、受動態的対照群と比較し、標準平均差(SMD)が1.09(95%信頼区間[CI]:0.68〜1.51)であり、全体的な認知機能低下を軽減するうえで、良好な有効性が示唆された。
・同様に、マルチコンポーネント運動は、実行機能にも有意な影響を示した(SMD:2.50、95%CI:0.88〜4.12)。
・30分のセッションを1週間当たり3〜4回実施し、介入期間を12〜24週間、強度を最大心拍数60〜85%で行った場合、全体的な認知機能改善に高い効果が得られることが示唆された。
・30〜61分のセッションを25週間以上行った場合、実行機能に対し、優れた効果が認められた。

 著者らは「MCI患者の全体的な認知機能および実行機能改善に対し、マルチコンポーネント運動が最も効果的な介入であることが確認された。とくに中程度〜強度の運動を、3回/週以上行うこと最も効果的であると考えられ、より短時間なセッションを頻繁に行うことで、認知アウトカムを最適化する可能性が示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)