運動は、認知機能低下に対し有用な非薬理学的介入の1つであるが、どのような運動が最も効果的であるかはよくわかっていない。中国・北京大学のXiuxiu Huang氏らは、認知症または軽度認知障害(MCI)の患者における認知機能に対するさまざまな運動介入の有効性を比較し、認知機能低下に関連する症状に対する運動の影響を調査した。Journal of Sport and Health Science誌オンライン版2021年5月16日号の報告。
2019年9月までに公表された認知症またはMCIの患者を対象に運動介入の有効性を調査したランダム化比較試験をPubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、SPORTDiscus、PsycInfoより検索した。主要アウトカムは、全般的な認知機能、実行機能、記憶とした。副次的アウトカムは、ADL、神経精神症状、QOLとした。変量効果モデルを用いてペアワイズ解析とネットワークメタ解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・71試験からなる73文献(5,606例)が抽出された。
・さまざまな運動介入は、全般的な認知機能を改善、維持するうえで効果的であった。
・レジスタンス運動は、認知機能低下を有する患者に対する最も効果的な運動介入である可能性が示唆された。
●全般的な認知機能:標準平均差(SMD)=1.05、95%信頼区間(CI):0.56~1.54
●実行機能:SMD=0.85、95%CI:0.21~1.49
●記憶:SMD=0.32、95%CI:0.01~0.63
・MCIの患者におけるサブグループ解析では、マルチコンポーネント運動(レジスタンス運動、バランス運動、ウォーキングなどの2種類以上の組み合わせ)は、全般的な認知機能および実行機能の低下を予防するうえで、最適な運動介入である可能性が示唆された。
●全般的な認知機能:SMD=0.99、95%CI:0.44~1.54
●実行機能:SMD=0.72、95%CI:0.06~1.38
・しかし、MCIの患者の記憶に有意な影響を及ぼした運動介入は、レジスタンス運動のみであった(SMD=0.35、95%CI:0.01~0.69)。
・副次的アウトカムに対し、運動介入によるさまざまな影響が示唆された。
著者らは「レジスタンス運動は、認知機能低下を有する患者、とくに認知症患者の認知機能低下の進行抑制に最適な運動介入である可能性が高かった。マルチコンポーネント運動は、MCIの患者の全般的な認知機能および実行機能を維持するうえで、最も効果的である傾向が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)