2024 ASCO Annual Meetingにて、第III相無作為化比較試験「LAURA試験」の結果、切除不能なEGFR遺伝子変異陽性StageIII非小細胞肺がん(NSCLC)における化学放射線療法(CRT)後のオシメルチニブ投与により、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善することが報告された。本試験の日本人集団の結果について、神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。
LAURA試験 試験デザインと結果の概要
試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
対象:18歳以上(日本は20歳以上)の切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者のうち、CRT(同時CRTまたはsequential CRT)後に病勢進行が認められなかった患者216例
試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回)を病勢進行または許容できない毒性、中止基準への合致のいずれかが認められるまで 143例
対照群(プラセボ群):プラセボ※ 73例
評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など
※:BICRによる病勢進行が認められた患者は非盲検下でオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。
データカットオフ時点(2024年1月5日)における全体集団のPFSの成熟度は56%、OSの成熟度は20%であり、BICRによるPFS中央値は、オシメルチニブ群39.1ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.16、95%信頼区間[CI]:0.10~0.24、p<0.001)。OS中央値は、オシメルチニブ群54.0ヵ月、プラセボ群未到達であった(HR:0.81、95%CI:0.42~1.56、p=0.530)。プラセボ群で病勢進行が認められた患者の81%が、オシメルチニブへクロスオーバーした。
日本人集団における主な結果は以下のとおり。
・全体集団216例のうち、日本人は30例(オシメルチニブ群23例、プラセボ群7例)含まれていた。全体集団と比較して、年齢中央値はやや高く(日本人集団:71歳、全体集団:63歳)、オシメルチニブ群に含まれるPS0の患者の割合も高かった(日本人集団:78%、全体集団:56%)。
・BICRによるPFS中央値は、オシメルチニブ群38.4ヵ月、プラセボ群6.4ヵ月であった。データカットオフ時点ではイベントが少なく、HRは算出されていないが、全体集団と同様にオシメルチニブのベネフィットが示された。1年PFS率はそれぞれ74%、29%、2年PFS率はそれぞれ65%、14%であった。
・データカットオフ時点で、オシメルチニブ群の26%(6例)、プラセボ群の14%(1例)で死亡が報告された。
・安全性プロファイルは全体集団と一致していたが、放射線肺臓炎はオシメルチニブ群で83%(19例)、プラセボ群で57%(4例)と、日本人集団で多く報告されていた(全体集団ではそれぞれ48%、38%)。しかし、Grade3以上の報告はオシメルチニブ群の4%(1例)のみであり、Grade4/5の報告はなかった。また、放射線肺臓炎が原因でオシメルチニブの投与中止に至った症例は1例のみであった。放射線肺臓炎の報告が多かった理由は、日本における集中的な間質性肺疾患(ILD)モニタリングの結果と考察された。
加藤氏は、今回の解析結果はLAURA試験の全体集団の結果と一致しているとし、オシメルチニブのCRT後の使用は日本人に対しても良好なベネフィット・リスクプロファイルを示したとまとめた。
ディスカッサントとして登壇したテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのKeunchil Park氏からは、本試験において病勢進行などが認められるまでオシメルチニブを投与継続することの意義などについて指摘があった。Park氏は、24ヵ月以降のオシメルチニブ群とプラセボ群のPFSを比較しながら、StageIIIの患者の治癒の可能性について言及した。また、切除可能/不能いずれの患者も含まれるStageIIIの患者の不均一性も踏まえ、治療戦略を検討する必要があると語った。
これを受けて加藤氏は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治癒の難しさに触れ、各施設の状況を踏まえて、術後補助療法もしくはCRT後というフロントラインでオシメルチニブの使用を検討することが望ましいのではないかと考えを語った。
(ケアネット 新開 みのり)