切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)において、化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法が有効であることが示され、標準治療となっている。しかし、EGFR遺伝子変異を有する患者は、本治療法の効果が乏しいことが知られており、アンメットメディカルニーズが存在する。そこで、CRT後のオシメルチニブの効果を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「LAURA試験」が実施された。その結果、CRT後のオシメルチニブで無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善することが示された。米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏が、LAURA試験のPFSに関する主解析および全生存期間(OS)に関する第1回中間解析の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。なお、本発表の詳細はNEJM誌オンライン版2024年6月2日号に同時掲載された1)。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:18歳以上(日本は20歳以上)の切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者のうち、CRT(同時CRTまたはsequential CRT)後に病勢進行が認められなかった患者216例
・試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回)を病勢進行または許容できない毒性、中止基準への合致のいずれかが認められるまで 143例
・対照群(プラセボ群):プラセボ※ 73例
・評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]OS、安全性など
※:BICRによる病勢進行が認められた患者は非盲検下でオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時の患者特性は、StageIIIAがオシメルチニブ群36%、プラセボ群33%、StageIIIBがそれぞれ47%、52%、StageIIICがそれぞれ17%、15%、EGFR遺伝子変異の内訳はexon19delがそれぞれ52%、59%であった。
・データカットオフ時点(2024年1月5日)において、PFSの成熟度は56%(オシメルチニブ群40%、プラセボ群86%)、OSの成熟度は20%(それぞれ20%、21%)であった。
・BICRによるPFS中央値は、オシメルチニブ群39.1ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月であり、オシメルチニブ群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.16、95%信頼区間[CI]:0.10~0.24、p<0.001)。1年PFS率はそれぞれ74%、22%であり、2年PFS率はそれぞれ65%、13%であった。
・BICRによるPFSは、事前に規定されたサブグループ間で一貫してオシメルチニブ群で改善する傾向にあった。
・BICRによる奏効率は、オシメルチニブ群57%、プラセボ群33%であり、奏効期間中央値はそれぞれ36.9ヵ月、6.5ヵ月であった。
・プラセボ群でBICRによる病勢進行が認められた患者の81%が、オシメルチニブへクロスオーバーした。
・OS中央値は、オシメルチニブ群54.0ヵ月、プラセボ群未到達であった(HR:0.81、95%CI:0.42~1.56、p=0.530)。
・Grade3の有害事象(AE)はオシメルチニブ群35%、プラセボ群12%に発現した。Grade4以上のAEはいずれの群も認められなかった。投与中止に至ったAEはそれぞれ13%、5%に発現した。
・放射線肺臓炎はオシメルチニブ群48%、プラセボ群38%に発現したが、ほとんどがGrade1/2であった。
Ramalingam氏は、本結果について「CRT後のオシメルチニブは、統計学的有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善をもたらした。また、OSの中間解析において、プラセボ群の多くがオシメルチニブへクロスオーバーしていたにもかかわらず、オシメルチニブ群が良好な傾向にあった。安全性に関する新たな懸念は認められず、管理可能であった。以上から、オシメルチニブはCRT後に病勢進行が認められないEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者における新たな標準治療となるだろう」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)