果物が大腸がんリスクを抑える~メンデルランダム化解析

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/28

 

 食物摂取とがん発症リスクに関する研究は多くあるが、観察研究は交絡因子の影響を受けやすく、因果関係の解釈が難しい場合がある。遺伝的変異を環境要因の代理変数として使用し、交絡バイアスを最小限に抑えるメンデルランダム化(MR)アプローチによって食事摂取と大腸がんリスクとの関連を評価した研究が発表された。韓国・ソウル大学のTung Hoang氏らによる本研究は、BMC Cancer誌2024年9月17日号に掲載された。

 本研究では、UKバイオバンクの大規模データを活用し、赤肉、加工肉、家禽、魚、牛乳、チーズ、果物、野菜、コーヒー、紅茶、アルコールといった食品の消費に関連する遺伝的変異を特定した。具体的には9,300万以上の遺伝的変異から399の変異を選び出し、これをもとに食事摂取量に関連する遺伝的リスクスコアを構築した。MR解析では、この遺伝的リスクスコアを利用して、食品摂取と大腸がんリスクとの因果関係を推定した。また、観察解析としてCox比例ハザードモデルを用い、実際の食品摂取量と大腸がんリスクとの関連も評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・MR解析の結果、遺伝的に予測される果物の摂取量が増加すると、大腸がんリスクが21%減少することが示された(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.66~0.95)。野菜の摂取についても、大腸がんリスクと弱い逆相関が認められた(HR:0.85、95%CI:0.71~1.02)。
・一方、観察解析では、果物と野菜の摂取量増加に対する大腸がんリスク低減の効果は有意ではなく、果物の摂取量1日当たり100g増加のHRは0.99(95%CI:0.98~1.01)、同じく野菜のHRは0.99(95%CI:0.98~1.00)であった。

 研究者らは「これらの結果から、果物の摂取増加が大腸がんリスクの低減と因果的に関連している可能性が支持され、大腸がん1次予防として果物の摂取が有効な戦略となることが示唆された。加工肉、赤肉、アルコールの摂取に関する遺伝的予測では、これらの食品が大腸がんリスクを増加させるとの結果は得られなかった。また、観察解析でも同様に、これらの食品摂取と大腸がんリスクとの有意な関連性は確認されなかった。さらに、コーヒーや紅茶、乳製品などの摂取についても有意な関連は認められなかった」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)