化膿性汗腺炎への適応が追加されたビメキズマブ、その特徴は?/UCB

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/05

 

 ユーシービージャパンは、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)について、2024年11月26日に化膿性汗腺炎(HS)の適応追加に関するメディアセミナーを行った。同薬剤は、9月24日にHSに対する適応追加の承認を取得している。セミナーでは、藤田 英樹氏(日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野)がHSの病態とビメキズマブの概要について講演を行った。

隠れているところにできる悩ましい疾患

 HSは、痛みを伴う慢性的かつ再発性の炎症性皮膚免疫疾患だ。腋窩や臀部、鼠径部、肛門周囲、乳房下部などの間擦部に好発し1)、しばしば炎症性の結節が生じ、膿瘍形成に進行、さらに毛包が破裂して排膿を伴う瘻孔を形成して、その後瘢痕化することがある2)。HSは痛みや瘢痕により、患者のQOLを損ないやすい疾患といえる。

 HSに適応がある生物学的製剤としては、2019年2月に適応追加されたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体のアダリムマブがある。アダリムマブのターゲットであるTNFαはさまざまな細胞から分泌されるが、ビメキズマブのターゲットであるIL-17A/IL-17Fは主にT細胞から分泌される。藤田氏は「既存の薬剤とターゲットが異なるビメキズマブが治療の選択肢に加わることは治療上良いこと」としたうえで、「使い分けは専門家でも非常に難しく、区別する検査や方法がないのが現状だ」と課題を述べた。

 今回の承認は、中等症~重症の化膿性汗腺炎患者を対象に、ビメキズマブの有効性と安全性を評価した2つの第III相試験、BE HEARD I試験および日本も参加したBE HEARD II試験に基づいている。

 BE HEARD II試験の主要評価項目である、HSに対する治療効果の評価指標HiSCR50の達成率(16週時点)は、プラセボ群の32.2%に対しビメキズマブ320mg Q4W群53.8%、同320mg Q2W群52.0%であり、ビメキズマブ群のいずれもプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善を示した(ビメキズマブ320mg Q4W群:p=0.004、同320mg Q2W群:p=0.003)。また、より厳格な指標であるHiSCR75の達成率(16週時点)においても、ビメキズマブ群はプラセボ群を上回る結果を示した。両試験における安全性のプロファイルは過去の乾癬などに対する臨床試験のデータと一致しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。

疾患の認知度向上が課題

 最後に、HS患者の奥村 幸代氏が登壇し、自身の経験について述べた。奥村氏はHSが発症してから診断を受けるまで年単位の時間がかかり、計10ヵ所以上の膿瘍摘出術を受けながら、いまだ症状が落ち着かない現状だという。疾患の情報が不足していることや患者会がなく患者間の情報共有が容易ではないこと、指定難病ではないことからの金銭的な負担を訴えた。今後については「HSの認知度が上がることで、医療へのアクセスが改善されることを期待している」と述べた。

(ケアネット 石原 菜保子)