手術可能な高齢乳がん患者の予後、即時手術vs.局所再発まで延期/SABCS2024

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/16

 

 70歳以上の手術可能な乳がん患者における、即時手術または局所再発まで手術を延期した場合の長期的リスクを調査したメタ解析によって、即時手術は5年以内の局所再発率を大幅に低下させ、長期的な遠隔再発率と乳がん死亡率も低下させたことを、英国・オックスフォード大学のRobert K. Hills氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

 これまでの研究により、年齢が上がるほど、とくに80歳以上になると手術の実施率が下がることが報告されている。そのため、手術可能な早期乳がんであっても、高齢患者に対しては内分泌療法のみを実施して手術は局所再発時まで行わないことがあるが、手術を延期することの長期的リスクは不明である。そこで研究グループは、即時手術と手術延期の転帰を比較するために、1980年代に開始された3つの無作為化試験を用いて個々の患者データのメタ解析を実施した。対象は、70歳以上の手術可能な乳がんの女性1,082例(全例がタモキシフェンを少なくとも5年間投与)であった。これらの試験では、放射線療法や化学療法は予定されていなかった。

 主要アウトカムは、局所再発までの期間、遠隔再発までの期間、乳がん死亡率であった。局所再発は、手術後の局所再発、または手術を行わない場合は腫瘍径の25%以上の増大と定義した。リンパ節転移の状態により層別化した年齢調整intent-to-treat log-rank解析を用いて初発再発の発生率比(RR)を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

●無作為化時の年齢中央値は76(73~80)歳、腫瘍径が20mm超だったのは63%(666/1,082例)であった。生存中の平均追跡期間は7.3年であった。
●即時手術を受けた518例のうち、45.7%が乳房切除術を受け、47.3%が乳房温存術を受けた。
●5年時点の局所再発率は、リンパ節転移の有無にかかわらず即時手術群で大幅に低く、この有益性はフォローアップ初期から認められた。
 ・リンパ節転移なし(656例) 即時手術群14.4%、手術延期群45.4%(RR:0.25、95%信頼区間[CI]:0.19~0.34、p<0.00001)
 ・リンパ節転移あり(262例) 即時手術群6.8%、手術延期群48.1%(RR:0.18、95%CI:0.11~0.29、p<0.00001)
●15年時点では、即時手術群のほうが遠隔再発率(RR:0.72、95%CI:0.57~0.90、p=0.003)、乳がん死亡率(RR:0.68、95%CI:0.54~0.86、p=0.002)が低かった。これらの有益性はフォローアップ初期は顕著ではなかった。
●全死因死亡率は、即時手術群のほうが低い傾向にあったが、有意差は認められなかった(RR:0.83、95%CI:0.72~0.97、p=0.016)。

(ケアネット 森)