うつ病、不安症、ADHD患者における双極症への移行率の比較

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/18

 

 一般的にみられる双極症の診断遅延は、アウトカム不良につながる可能性がある。ほとんどの研究では、主な前駆症状としてうつ病に焦点を当てているが、不安症や注意欠如多動症(ADHD)も、診断初期に高頻度で認められる。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のKevin Li氏らは、これらの前駆症状から双極症への移行率を調査し、相関関係を定量化するため、大規模な電子健康記録(EHR)を用いて、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年2月号の報告。

 多様な都市医療センターであるジョンズ・ホプキンス・メディスンの10年間の包括的なEHRデータセットを分析し、うつ病、不安症、ADHDから双極症への移行率および相関関係を評価および比較した。移行のリスク因子は、比例ハザードモデルで時間変動変数として評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・最初に対象となった2万1,341例のうち、1,232例が双極症に診断が移行した。
・調整後1年診断移行率は、うつ病で4.2%、不安症で3.4%、ADHDで4.0%。
・調整後10年診断移行率は、うつ病で11.4%、不安症で9.4%、ADHDで10.9%。
・すべての前駆診断において双極症への移行と関連していた因子は、年齢(19〜29歳)治療環境(救急および入院)、向精神薬であった。
・重度およびうつ病診断は、双極症への移行リスクの最も強力な因子の1つであった。
・診断移行リスク因子は同様であったが、小児では移行率がより低く(とくにADHD)、成人ではより高かった。

 著者らは「双極症への移行リスクが最も高いのは、最初にうつ病と診断された患者であったが、不安症やADHDと診断された患者においても、有意なリスクが認められた」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)