既治療の小細胞肺がん、承認取得のタルラタマブのアジア人データ(DeLLphi-301)/ESMO Asia2024

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/30

 

 腫瘍細胞上に発現するDLL3とT細胞上に発現するCD3に対する特異性を有するBiTE(二重特異性T細胞誘導)抗体タルラタマブ。既治療の小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」において、タルラタマブ10mg投与例の奏効率は40%、無増悪生存期間(PFS)中央値は4.9ヵ月、全生存期間(OS)中央値は14.3ヵ月と良好な成績を示した1)。本試験の結果に基づき、本邦では2024年12月27日に「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応で製造販売承認を取得した。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが追加されている2)。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、DeLLphi-301試験のアジア人集団のpost-hoc解析結果を、赤松 弘朗氏(和歌山県立医科大学 内科学第三講座 准教授)が発表した。

 本試験は3つのパートで構成された。対象は、プラチナダブレットを含む2ライン以上の治療歴を有するSCLC患者とした。パート1(用量探索パート)では176例を登録し、タルラタマブ10mg群(88例)と100mg群(88例)に1対1の割合で無作為に割り付け、投与した。パート2(用量拡大パート)では12例を登録し、パート1の結果に基づいてタルラタマブ10mgを投与した。パート3(reduced inpatient monitoringパート)では34例を登録し、タルラタマブ10mgを投与した。

 投与方法は、割り付けられた治療群に基づき1日目にタルラタマブ1mgを投与し、8、15日目に10mgまたは100mgを投与、その後は2週ごとに10mgまたは100mgを投与することとした。評価項目は以下のとおりであった。

[主要評価項目]ORR
[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、PFS、OS、安全性など

 今回はタルラタマブ10mgを投与されたアジア人集団43例(有効性の解析は41例)の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。

・対象患者の年齢中央値は64.0歳(範囲:43~79)、男性の割合は81%であった。喫煙歴あり/なしの割合は84%/16%で、2ライン/3ライン以上の治療歴を有する割合は65%/35%であった。
・ORRは46.3%(全体集団の10mg投与例:40.0%)、DCRは80.5%(同:70.0%)であった。また、DOR中央値は7.2ヵ月で、データカットオフ時点において奏効例の32%(6/19例)が1年以上治療を継続中であった。
・PFS中央値は5.4ヵ月であり、6ヵ月PFS率は41.7%、12ヵ月PFS率は21.4%であった。
・OS中央値は19.0ヵ月であり、12ヵ月OS率は67.4%、18ヵ月OS率は53.3%であった。
・最も多く認められた有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)で49%に発現したが、全例がGrade1/2であった。CRSのほとんどが1サイクル目に発現した。
・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は、9.3%に発現したが、全例がGrade1/2であった。ICANSのほとんどが3ヵ月以内に発現した。
・治療中止に至った有害事象は認められなかった。

 本結果について、赤松氏は「既治療のSCLC患者に対するタルラタマブは、アジア人集団でも新たな安全性に関するシグナルは認められず、持続的な奏効と注目すべき生存成績がみられ、良好なベネフィット/リスクプロファイルを示した」とまとめた。なお、SCLCへのタルラタマブについては、再発SCLC患者を対象としてタルラタマブと化学療法を比較する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。

(ケアネット 佐藤 亮)