今シーズンはインフルエンザが猛威を振るっている。厚生労働省の1月9日の発表によると、インフルエンザの定点当たりの報告数は全国平均で1施設当たり64.39例(2024年第52週時点)で、同時期の報告数として過去10年で最多となった。
インフルエンザは小児に重篤な疾患を引き起こす可能性があり、とくに5歳未満の小児ではリスクが高い。米国疾病予防管理センター(CDC)のKelsey M. Sumner氏らは、2015~20年の5年間にわたり、急性呼吸器疾患(acute respiratory illness:ARI)で救急外来受診や入院治療を受けた生後6ヵ月~17歳を対象にインフルエンザワクチンの有効性を検証した。その結果、ワクチンはすべての重症度において一貫して、50%以上の有効性を示すことが明らかとなった。JAMA Network Open誌2024年12月27日号に掲載。
本研究は、検査陰性デザイン(test-negative design)の症例対照研究で、2015年11月6日~2020年4月8日に、New Vaccine Surveillance Networkに参加している米国8州の医療機関8施設のデータを使用し、急性呼吸器疾患(ARI)で入院や救急外来受診した生後6ヵ月~17歳を対象に実施された。対象者は、インフルエンザ検査陽性群とインフルエンザ検査陰性の対照群に分類された。また、ワクチン接種歴に基づいて分類され、ARIの重症度を基準に登録された。重症度は救急外来受診、非重篤な入院、重篤な入院(ICU入院や死亡を含む)の3段階とした。多変量ロジスティック回帰モデルを用いてワクチン接種オッズを比較してワクチン効果を推定し、ワクチン接種の有無による重症化リスクの低減効果を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・ARIで治療を受けた小児1万5,728例(男児:55.4%、6ヵ月~8歳:1万3,450例[85.5%]、9~17歳:2,278例[14.5%])のうち、2,710例(17.2%)がインフルエンザ検査陽性(症例群)、1万3,018例(82.8%)がインフルエンザ検査陰性(対照群)であった。
・インフルエンザ陽性群のうち、1,676例(61.8%)が救急外来を受診し、896例(33.1%)が非重篤な入院、138例(5.1%)が重篤な入院であった。
・全体の約半数(7,779例[49.5%])がワクチン接種を受けていた。症例群の接種率は32.6%、対照群の接種率は53.0%であった。
・推定ワクチン効果として、インフルエンザワクチンを少なくとも1回接種すると、インフルエンザ関連の救急外来受診または入院リスクが、接種しなかった場合と比較して推定55.7%(95%信頼区間[CI]:51.6~59.6)低下した。
・推定ワクチン効果は、年少児(6ヵ月~8歳:58.1%[95%CI:53.7~62.1])のほうが、年長児(9~17歳:42.6%[95%CI:29.2~53.5])よりも高かった。
・重症度別のワクチン効果は、救急外来受診では52.8%(95%CI:46.6~58.3)、非重篤な入院では52.3%(95%CI:44.8~58.8)、重篤な入院では50.4%(95%CI:29.7~65.3)で、いずれの重症度でも同様だった。
インフルエンザワクチンを少なくとも1回接種すると、インフルエンザに関連する小児救急外来受診または入院が50%強減少することが判明した。著者らは本結果について、小児がインフルエンザ関連の重篤な症状を予防するために、毎年のワクチン接種が重要であることを示唆している、とまとめている。
(ケアネット 古賀 公子)