乳がん診断後の手術遅延、サブタイプ別の死亡リスクへの影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/22

 

 乳がん診断後の手術遅延による乳がん特異的死亡率(BCSM)への影響はサブタイプにより異なり、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)患者でBCSMリスクの最も顕著な増加がみられたことが明らかになった。これまで、手術の遅れが死亡リスク増加と関連することが報告されていたが、サブタイプによる違いがあるかどうかは明らかになっていなかった。米国・Stephenson Cancer CenterのMacall Leslie Salewon氏らが実施した後ろ向きコホート研究の結果が、Breast Cancer Research誌2024年12月30日号に掲載された。

 研究グループは、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースを用いて、2010~17年に初回治療として手術を受けた局所乳がん患者において、手術の延期が生存率に与える影響がサブタイプ(HR+/HER2-、HR-/HER2-、およびHER2+)によって異なるかどうかを評価した。手術までの時間(TTS)は、診断のための生検日から手術日までの日数として定義され、TTS=30日を対照とした。BCSMは、サブタイプ別にそれぞれFine-Gray回帰モデルを使用してTTSに応じて評価され、TTSに影響を与える人口統計学的・臨床的変数、治療変数が傾向スコアによる逆数重み付け法を用いて調整された。

 主な結果は以下のとおり。

・調整後のBCSMリスクは、すべてのサブタイプにおいてTTSの増加とともに増加したが、その関連パターンと範囲は異なっていた。
・HR+/HER2-患者において、TTSに関連するBCSMリスクは最も顕著な増加を示した。BCSMリスクはTTS=42日以降にほぼ指数関数的に増加し、調整後の部分分布ハザード比(sHR)は、TTS=60日で1.21(95%信頼区間[CI]:1.06~1.37)、TTS=90日で1.79(95%CI:1.40~2.29)、TTS=120日で2.83(95%CI:1.76~4.55)であった。
・HER2+患者では、sHRはほぼ直線的な増加を示し、TTS=60日で1.34(95%CI:1.02〜1.76)、TTS=90日で1.78(95%CI:0.92〜3.44)、TTS=120日で2.29(95%CI:0.63〜8.31)であった。
・HR-/HER2-患者では、sHRはほぼ直線的な増加を示したものの推定値に有意差はみられなかった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)