これまでの研究では、片頭痛と自殺リスクとの関連が示唆されているが、さまざまな頭痛疾患と自殺企図および自殺リスクとの関連を評価した研究は限られている。デンマーク・オーフス大学のHolly Elser氏らは、片頭痛、緊張性頭痛、外傷後頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)と自殺企図および自殺リスクとの関連を調査した。JAMA Neurology誌オンライン版2025年2月3日号の報告。
1995〜2020年にデンマーク国民を対象に人口ベースコホート研究を実施した。デンマークの人口は約560万人。対象は、頭痛と診断された15歳以上の患者および性別、生年月日に基づき1:5の比率でマッチさせた対照者。2023年5月〜2024年5月にデータ分析を行った。頭痛患者は、入院、救急外来、専門外来クリニックにおいてICD-10に基づき、初めて頭痛と診断された患者。主要アウトカムは、自殺企図および自殺リスクとした。自殺企図は、ICD-10診断コードを用いてデンマーク国立患者レジストリおよびデンマーク精神医学中央研究所レジストリより特定した。自殺は、デンマーク死因レジストリより特定した。自殺企図および自殺の絶対リスク(AR)とリスク差(RD)は、累積発生率関数を用いて算出した。頭痛診断と関連する自殺企図および自殺のハザード比(HR)は、年齢、性別、年、教育、収入、ベースラインの併存疾患で調整した後、競合する死亡リスクを考慮して算出した。
主な結果は以下のとおり。
・対象は、頭痛と診断された患者11万9,486例(女性の割合:69.5%[8万3,046例])と対照群59万7,430例(女性の割合:69.5%[41万5,230例])。
・年齢中央値は、40.1歳(四分位範囲[IQR]:29.1〜51.6)。
・自殺企図の15年ARは、頭痛患者で0.78%(95%信頼区間[CI]:0.72〜0.85)、比較コホートで0.33%(95%CI:0.31〜0.35)であった(RD:0.45%、95%CI:0.39〜0.53)。
・自殺の15年ARは、頭痛患者で0.21%(95%CI:0.17〜0.24)、比較コホートで0.15%(95%CI:0.13〜0.16)であった(RD:0.06%、95%CI:0.02〜0.10)。
・自殺企図および自殺の危険性は、比較コホートと比較し、頭痛患者で有意に高かった。
【自殺企図の危険性】HR:2.04、95%CI:1.84〜2.27
【自殺の危険性】HR:1.40、95%CI:1.17〜1.68
・これらの結果は、頭痛の種類を問わず一致しており、TACおよび外傷後頭痛との関連性はより強力であった。
著者らは「頭痛の診断と自殺企図および自殺との間に、強力かつ持続的な関連性が確認された。これは、頭痛患者における行動健康評価および治療の重要性を示唆している」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)