抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体を3年以上使用することが片頭痛の経過にどのような影響を及ぼすかを判断するため、イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体治療を3回繰り返した後、治療を中止した際の片頭痛頻度を明らかにするため、多施設プロスペクティブ実臨床試験を実施した。Journal of Neurology誌2025年1月25日号の報告。
対象は、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体の皮下投与を1サイクルとし、3回完了した高頻度片頭痛または慢性片頭痛患者212例。中止期間(D1、D2、D3)は、3回の治療サイクル(T1、T2、T3)後、最初の1ヵ月間と定義した。主要エンドポイントは、D2と比較したD3での50%以上の治療反応率とした。副次的エンドポイントには、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの鎮痛薬摂取量(MAI)、数値評価尺度(NRS)、頭痛影響テスト(HIT-6)、D3とD1およびD2の50%以上治療反応率の変化、慢性片頭痛の再発率、薬物過剰使用の再発率を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・D3では、D2と比較し、50%以上の治療反応率、MMD、MHD、MAI、NRS、HIT-6の有意な改善(p<0.001)、慢性片頭痛および薬物過剰使用の再発率の低下が認められた。
【50%以上の治療反応率】77.8%vs.53.8%
【MMD】−2.1±1.7
【MHD】−2.9±2.4
【MAI】−2.6±2.4
【NRS】−0.7±1.3
【HIT-6】−7.2±5.9
【慢性片頭痛の再発率】2.3%vs.18%
【薬物過剰使用の再発率】1.3%vs.10.1%
・D3では、D1と比較し、MMD、MHD、MAI、NRS、HIT-6のより大きなベネフィットが示され(p<0.001)、50%以上の治療反応率が高く、慢性片頭痛および薬物過剰使用の再発率の低下が認められた。
【50%以上の治療反応率】77.8%vs.25.0%
【MMD】−2.6±1.9
【MHD】−5.8±3.3
【MAI】−4.9±3.4
【NRS】−1.0±1.6
【HIT-6】−9.4±7.0
【慢性片頭痛の再発率】2.3%vs.67.7%
【薬物過剰使用の再発率】1.3%vs.34.2%
著者らは「3年間の抗CGRPモノクローナル抗体治療により、50%以上の治療反応率は徐々に増加し、片頭痛の負担が大幅に軽減されることが明らかとなった。抗CGRPモノクローナル抗体による片頭痛治療を長期的に実施することで、片頭痛の経過が好転する可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)