注意欠如多動症(ADHD)は、小児によくみられる神経発達障害であり、作業記憶障害を伴うことが多い疾患である。最近、小児ADHDの認知機能改善に対する潜在的な戦略として、運動介入が注目されている。しかし、さまざまな運動介入が作業記憶に及ぼす影響は、明らかとなっていない。中国・北京師範大学のXiangqin Song氏らは、さまざまな運動介入が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychology誌2025年1月27日号の報告。
関連する研究を、各種データベース(PubMed、Cochrane、Embase、Web of Science)より包括的に検索した。包括基準および除外基準に従ってスクリーニングした後、17件の研究が分析対象に特定された。ネットワークメタ解析を実施してデータを統合し、認知有酸素運動、球技、心身運動、インタラクティブゲーム、一般的な有酸素運動が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・小児ADHDに対するさまざまな種類の運動介入効果には、有意な違いが認められた。
・最も有意な効果を示した運動介入は、認知有酸素運動(標準化平均差[SMD]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.44〜1.00)、次いで球技(SMD:0.61、95%CI:−0.12〜1.35)であった。
・心身運動とインタラクティブゲームは、中程度の効果を示したが、一般的な有酸素運動の効果は比較的小さかった。
【認知有酸素運動】SMD:0.72、95%CI:0.44〜1.00
【球技】SMD:0.61、95%CI:−0.12〜1.35
【心身運動】SMD:0.50
【インタラクティブゲーム】SMD:0.37
【一般的な有酸素運動】SMD:0.40、95%CI:0.19〜0.60
・SUCRA分析では、作業記憶の改善に対し、認知有酸素運動が最も有用であることが確認された。
・メタ回帰分析では、介入頻度および総介入期間は、認知有酸素運動の効果に有意な影響を及ぼすことが示唆された。他の変数の影響は認められなかった。
著者らは「認知有酸素運動は、小児ADHDの作業記憶改善に最も効果的である運動介入であることが示唆された。介入頻度を上げ、介入期間を長くするほど、その介入効果は高まる可能性がある。今後の研究において、これらの因子の影響を調査し、調整因子の役割を検証するためにも、より大きなサンプルサイズによる検討が必要とされる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)