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徒歩で生活しやすいデザインの地域は人々の交流を高める

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/07/25

 

 徒歩で生活しやすい地域に住んでいる人は、移動に車が必要な地域に住んでいる人に比べて、近隣住民との交流が多く、コミュニティー意識も強いことが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Herbert Wertheim School of Public Health and Human Longevity ScienceのJames F. Sallis氏らによるこの研究の詳細は、「Health & Place」7月号に掲載された。

 米国の公衆衛生政策を指揮する医務総監のVivek Murthy氏は2023年5月に、「孤独や孤立は高齢者での心疾患リスクを29%、脳卒中リスクを32%、認知症リスクを50%、早期死亡リスクに至っては60%以上増加させる要因となる」と述べた。そして、この公衆衛生危機への対応として、人と人とのつながりを促進する環境デザインにより社会基盤を強化することを推奨している。

 Sallis氏は、「人との交流や身体活動、自然との触れ合いなどは公衆衛生に影響を与えるが、そうした経験が可能かどうかは、われわれが作り上げる環境に左右される」と話す。そして、「米国での交通政策と土地利用政策は、車での移動と郊外開発を強く優先してきた。その結果、何百万人もの米国人が、どこへ行くにも車が必要な地域に住み、近隣住民と交流する機会がほとんどない状態に置かれている」と指摘する。

 Sallis氏らは今回の研究で、米シアトル、ボルチモア、ワシントン周辺の32地域に住む20〜66歳の成人1,745人(平均年齢46歳)が参加したNeighborhood Quality of Life Study(近隣地域QOL調査)のデータを分析した。試験参加者の自宅周辺(自宅から半径1kmの範囲内の道路ネットワーク)の歩きやすさ(ウォーカビリティ)を、居住密度、交差点密度、土地の複合利用状況、および小売・商業用地総面積に対する小売・商業用地の容積率に基づき、ウォーカビリティ指数で数値化した。その上で、参加者の報告した近隣住民との交流やコミュニティー意識との関連を検討した。

 その結果、ウォーカビリティ指数は、社会的交流の高さ(P<0.001)、およびコミュニティー意識の高さ(P=0.009)と有意に関連することが明らかになった。居住地の自己選択を考慮して解析すると、ウォーカビリティ指数は社会的交流の高さとは有意に関連したままであったが(P=0.008)、コミュニティー意識の高さとの関連は有意ではなくなった(P=0.518)。

 こうした結果を受けて、論文の筆頭著者で、UCSD Herbert Wertheim School of Public Health and Human Longevity ScienceのJacob R. Carson氏は、「徒歩で生活しやすい場所に住んでいると、手を振ってあいさつをしたり、手助けを求めたり、屋内に人を招いて交流したりといった、近隣住民との社会的交流が促される可能性がある」と述べる。これに対して、車での移動が必要な地域は、住民同士のつながりを希薄にする効果を持っているかもしれないと同氏は指摘する。

 Carson氏は、「社会的交流の促進は、公衆衛生の重要な目標である。地域デザインの役割を理解することで、地域社会とそこに住む人々の健康を守るためのわれわれの能力も強化される」と話す。その上で、「徒歩で生活しやすい環境のデザインは、われわれの生活を豊かにする。交通事故の減少、身体活動の増加、近隣の社会的健康の改善などは、そのような地域をデザインすることで得られる結果のほんの一部に過ぎない」と述べている。

 なお、本研究は、米国立衛生研究所(NIH)から一部資金提供を受けて実施された。

[2023年6月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら