特定のワクチン接種でアルツハイマー病リスクが低下する可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/09/25

 

 特定の成人用ワクチンには、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる効果があるようだ。帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、破傷風およびジフテリアの二種混合(Td)ワクチン、またはこれらに百日咳を加えた三種混合(Tdap)ワクチンを接種した人では、これらのワクチンを接種していない人と比べて、アルツハイマー病の発症リスクが25~30%低下していたことが、米テキサス大学健康科学センターのPaul Schulz氏らによる研究で明らかにされた。詳細は、「Journal of Alzheimer's Disease」に8月7日掲載された。

 Schulz氏らは2022年に、インフルエンザワクチンを1回以上接種した成人では、同ワクチンを接種したことのない成人と比べてアルツハイマー病を発症するリスクが40%低下していたとする研究結果を報告していた。Schulz氏は、「今回の研究データから、その他にもいくつかの成人用ワクチンがアルツハイマー病発症リスクの低下に関連していることが明らかになった」と説明している。

 今回の研究でSchulz氏らは、165万1,991人の患者の医療記録データを解析し、成人期の定期接種が推奨されている帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、Tdワクチン、Tdapワクチンを接種した人と未接種の人の間でのアルツハイマー病の発症率を比較した。患者は、2年間の振り返り期間には認知症がなく、8年間の追跡期間の開始時点で65歳以上だった。

 その結果、追跡期間中にアルツハイマー病を発症した人の割合は、TdapまたはTd(以下、Tdap/Td)ワクチン接種者で7.2%(8,370人)、未接種者で10.2%(1万1,857人)であり、ワクチン接種者ではアルツハイマー病の発症リスクが30%低いことが示された(相対リスク0.70、95%信頼区間0.68〜0.72)。また、帯状疱疹ワクチンでは、ワクチン接種者の8.1%(1万6,106人)、未接種者の10.7%(2万1,273人)、肺炎球菌ワクチンでは、ワクチン接種者の7.92%(2万583人)、未接種者の10.9%(2万8,558人)が追跡期間中にアルツハイマー病を発症しており、ワクチン接種者では未接種者に比べてアルツハイマー病の発症リスクがそれぞれ25%(同0.75、0.73〜0.76)と27%(同0.73、0.71〜0.74)低下していた。

 なお、研究グループによると、アルツハイマー病の新たな治療薬として注目されている3種類の抗アミロイド抗体を使用した場合、それら3剤がアルツハイマー病の進行を抑制させる効果は、それぞれ25%、27%、35%であるという。

 Schulz氏は、「われわれや他の研究者らは、アルツハイマー病における脳細胞の機能低下をもたらすのは免疫システムであるとの仮説を提唱している。今回の研究結果は、ワクチン接種が免疫システムに、より全般的な影響を与え、アルツハイマー病の発症リスクを低下させることを示唆するものだ」とテキサス大学のニュースリリースで述べている。

 論文の共著者で、米マサチューセッツ総合病院のAvram Bukhbinder氏は、「われわれは、ワクチン接種に関連したアルツハイマー病発症リスクの低下は、複数のメカニズムが組み合わさることでもたらされている可能性があるとの仮説を立てている」と話す。同氏は、「ワクチンは、免疫細胞によるアルツハイマー病に関わるタンパク質除去の効率を高めたり、それらのタンパク質に対する免疫反応を強化し、周囲の健康な脳細胞への『付随的損傷』を軽減したりすることで、その蓄積に対する免疫システムの反応を変化させる可能性がある」と説明。さらに、「当然ながら、これらのワクチンには帯状疱疹などの感染症に対する予防効果があるため、神経炎症の抑制効果も期待できる」と話している。

 研究グループは、今回の研究により、成人用ワクチンの定期接種へのアクセスを確保することが患者にとっていかに重要であるかが明確に示されたと指摘している。

[2023年8月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら