10代前半での男児の喫煙は、将来の子どものDNAに悪影響を与え、子どもの喘息、肥満、肺機能低下のリスクを高めることが、新たな研究で明らかにされた。英サウサンプトン大学のNegusse Kitaba氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Epigenetics」に8月31日掲載された。
この研究では、RHINESSA試験参加者875人(7〜50歳、男性457人、女性418人)を対象にエピゲノムワイド関連研究(EWAS)を実施してDNAメチル化パターンを調べ、参加者の母親が妊娠する前の父親の喫煙との関連を検討した。参加者のうちの328人では、父親が母親の妊娠前(参加者の出生年より2年以上前)に喫煙を開始しており、うち64人では、父親の喫煙開始年齢が15歳未満だった。なお、DNA分子にメチル基が付加されるDNAメチル化は、DNAの配列を変更せずに遺伝子の機能を制御するプロセス(エピジェネティクス)の主要素であり、主に遺伝子の発現を抑制する役割を果たす。
その結果、15歳未満で喫煙を開始した父親の子どもでは、14種類の遺伝子にマッピングされた19カ所のCpGサイトでのメチル化が確認された。また、これらのメチル化は、喘息、肥満、および喘鳴と関連していることも示された。さらに、19種類のメチル化のうちの16種類は、過去の研究では母親や当人の喫煙歴とは関連付けられていないものであった。この結果について、論文の共著者であるベルゲン大学(ノルウェー)のGerd Toril Morkve Knudsen氏は、「このことは、これらの新しいメチル化バイオマーカーが、思春期初期に喫煙を開始した父親の子どもに特有のものである可能性を示唆している」と語る。
Kitaba氏は、「このエピジェネティックなマーカーの変化は、思春期初期に喫煙を開始した父親の子どもでは、時期を問わず母親が妊娠する前に喫煙を開始した父親の子どもよりもはるかに顕著だった」と話す。そして、「思春期初期は、男児の生理的変化の重要な時期なのかもしれない。なぜなら、幹細胞が生涯にわたり精子を作り続けるための基盤を築くのがこの時期にあたるからだ」と同大学のニュースリリースで説明している。
一方、論文の共同上席著者であるベルゲン大学のCecilie Svanes氏は、「子どもの健康は、若者の今の行動にかかっている。特に重要なのは、思春期初期の男児(将来の父親)と、妊娠前および妊娠中の母親と祖母の行動だ」と話す。
英国での若年喫煙者の数は減少傾向にあるが、論文の共同上席著者であるサウサンプトン大学のJohn Holloway氏は、電子タバコの人気の高まりに懸念を示している。Holloway氏は、「動物実験の中には、紙巻きタバコの煙に含まれているニコチンが、喫煙者の子どもにエピジェネティックな変化を引き起こす可能性を示唆するものもある。そのため、今のティーンエイジャー、特に男児が、電子タバコを通じて非常に高レベルのニコチンにさらされているのは、深く憂慮すべきことだ」と述べている。
Holloway氏は、今回の研究は、タバコの使用が今よりはるかに一般的であった1960〜1970年代に10代であった父親の子どもを対象にしたものであることを指摘する。その上で、「電子タバコが世代を超えて同様の影響を及ぼすと断言することはできない。しかし、ティーンエイジャーの電子タバコ使用がもたらす影響を明らかにするのに数世代を待つべきではない。われわれは、今行動する必要がある」と強調している。
[2023年9月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら