乳房サイズの大きい女性は、運動をあまり行っていないことを示すデータが報告された。フリンダース医療センター(オーストラリア)で乳房再建手術を行っているClaire Baxter氏らの研究結果であり、詳細は「JPRAS Open」9月号に掲載された。同氏らは、胸の大きい女性の運動不足が乳房縮小手術によって改善する可能性があるとしている。
この研究は、一般市民が自由参加可能なウォーキングやランニングなどの大会を世界各地で開催している団体「parkrun」を通じて募集された、乳がんの既往のない18歳以上の女性に対するアンケート調査として実施された。解析対象は1,987人で、居住地は英国が43.1%、オーストラリアが41.5%、南アフリカが14.3%を占めていた。平均年齢は46.5±12.2歳であり、BMIは26.0±5.5で、56人(2.8%)が乳房縮小手術を受け、26人(1.3%)が豊胸手術を受けていた。
4割以上の人が、1回30分以上の運動を週に4回以上行っていた。自己申告によるブラジャーのカップサイズとの関連を検討した結果、カップサイズが小さい女性ほど、そのような運動を行っている割合が高かった。また、カップサイズが小さいほど、5kmランニングの走行スピードが速いという関連が認められた。
「胸が小さい方が運動頻度は増加すると思うか」という質問や「胸が小さい方が運動パフォーマンスは向上すると思うか」という質問に対して、カップサイズの大きい女性ほど、「そう思う」とする回答が多い傾向が見られた。実際に乳房縮小手術を受けていた56人に対して運動頻度の変化を問うと、「大幅に増加した」が35.1%、「増加した」が40.4%、「不変」が24.6%であり、「減少した」や「大幅に減少した」は0%だった。高強度運動の頻度や1回当たりのトレーニング時間についても、「大幅に増加した」または「増加した」との回答が多くを占めていた。
これらの結果を基に著者らは、「女性の胸の大きさが運動習慣に影響を及ぼし、乳房縮小手術によって運動を行う意欲が上昇することが明らかになった」と述べるとともに、乳房縮小手術に対するオーストラリアでの位置付けに関する問題点を指摘している。論文の共著者であるフリンダース大学(オーストラリア)のNicola Dean氏は、「乳房縮小手術の積極的な施行には患者が肩や首の痛みを訴えていることが前提とされ、それだけでなく州ごとに細かい要件が多数定められている」と話す。
Dean氏によると、例えば同国のビクトリア州やタスマニア州などには、乳房縮小手術の適応基準の中にBMIの規定があり、また「手術まで1年以上待たなければいけないケースもある」とのことだ。英国も同様で、「保険が適用される乳房縮小手術の条件は地域によって異なるが、一般的に乳房縮小手術は優先順位が低い手術と捉えられていて、手術を受ける順番を抽選によって決めている地域もある」という。
今回の研究では、ブラジャーのカップサイズと生活の満足度や幸福度との関連も調査された。その結果、カップサイズが大きい場合は、満足度や幸福度のスコアが低いことも明らかになった。Baxter氏は、「乳房縮小手術のメリットに関する社会的な認識の向上と、学術的な研究の推進が必要とされる」と述べている。
[2023年8月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら