自分は副流煙(他人が吸っているタバコの燃焼部分から立ち上る煙)にさらされていないと思っている人の多くが、実際には副流煙にさらされている(受動喫煙)ことが、米国成人を対象に行われた新たな研究で明らかになった。血液検査では、調査対象者の半数以上が過去数日内に副流煙にさらされていたことが示されたにもかかわらず、大半はその自覚がなかったのだ。米フロリダ大学College of Public Health and Health ProfessionsのRuixuan Wang氏らによるこの研究の詳細は「Nicotine & Tobacco Research」に8月30日掲載された。
Wang氏は、「副流煙曝露に安全なレベルはなく、長期間の曝露は、冠動脈疾患や呼吸器疾患、がんなどの多くの慢性疾患のリスクを高める可能性がある。われわれは、人々が防御措置を講じることができるように、自分が副流煙に曝露していることに気付いてほしいと思っている」と同大学のニュースリリースで述べている。
今回の研究では、2013年から2020年にかけての米国国民健康栄養調査(NHANES)への参加者から抽出した非喫煙者1万3,503人のデータが分析された。参加者のうち、あらゆるタバコ製品への曝露(ニコチン曝露)はないと報告したが、血清中のコチニン(ニコチンの体内での代謝産物)が検出可能な値(>0.015ng/mL)であった場合を「ニコチン曝露の過小報告」と見なし、これに関連する社会人口統計学的因子や慢性疾患について検討した。
その結果、参加者の22.0%がニコチン曝露のあったことを自己報告し、51.2%で血清コチニンレベルからニコチン曝露が確認され、34.6%がニコチン曝露を過小報告していたことが明らかになった。血清中のコチニンが検出可能レベルだった参加者に占める過小報告者の割合は67.6%に上った。男性、非ヒスパニック系の黒人、その他の人種(アジア系米国人、ネイティブ・アメリカン、太平洋諸島系米国人)、心血管疾患のない人は、ニコチン曝露を過小報告する傾向が強かった。血清コチニンレベルの中央値は、ニコチン曝露を自己報告した人で0.107ng/mLであったのに対し、ニコチン曝露を過小報告した人で0.035ng/mLだった。
Wang氏は、「この研究結果は、ニコチン曝露リスクのあるグループに的を絞った介入の考案に役立つと思われる」と話す。
なぜ、参加者の多くがニコチンに曝露していることに気が付かなかったのだろうか。その理由について、論文の上席著者であるフロリダ大学健康アウトカム・生物医学情報学分野のJennifer H. LeLaurin氏は、「低レベルの曝露であれば、気付かない可能性もある。公共の場で、周囲の誰かがタバコを吸っていることに気が付かなかったという状況は考えられる。あるいは、わずかな曝露であれば、忘れてしまう可能性もある」と分析する。同氏はさらに、「研究参加者の中には、スティグマに対する懸念から、自分が副流煙にさらされていることに気付いていたにもかかわらず、それを報告しなかった人がいる可能性もある」と述べている。
なお、研究グループによると、今回の結果を米国全土に当てはめると、およそ5600万人が、気付かないうちに有害な副流煙に日常的にさらされていると計算されたとのことだ。
[2023年9月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら