新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象に、広く使用されている安価なスタチン系薬のシンバスタチンとビタミンCのそれぞれの有効性を調べた2件の臨床試験で、大きく異なる結果が示された。これらの試験は感染症の患者を対象とした進行中の国際共同研究「REMAP-CAP(Randomised, Embedded, Multi-factorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia)」の一環で実施され、スタチン系薬に関する試験の詳細は「The New England Journal of Medicine(NEJM)」、ビタミンCに関する試験の詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」にいずれも10月25日掲載されるとともに、欧州集中治療医学会(ESICM 2023、10月21~25日、イタリア・ミラノ)でも発表された。
シンバスタチンの臨床試験には13カ国、141施設の病院からCOVID-19重症患者が参加し、最終的に2,684人のデータが解析された。その結果、シンバスタチンはCOVID-19重症患者の集中治療室(ICU)での臓器サポートを要する日数の短縮に95.9%の確率で寄与し、90日時点での生存率向上に91.9%の確率で寄与することが明らかになった。研究グループの計算によると、この結果は、同薬を投与した33人のうち1人の命が救われることに相当するという。
REMAP-CAPのシンバスタチンの試験を主導した英クィーンズ大学ベルファストのDanny McAuley氏は、米国での研究のスポンサーとなったGlobal Coalition for Adaptive Research(GCAR)のニュースリリースで、「この結果は、シンバスタチンによる治療がCOVID-19重症患者の転帰を改善する可能性が高いことを示しており、実に心強いものだ」とした上で、「この研究は、各国の医療専門家がCOVID-19患者に対する治療を向上させる上で助けとなるだろう」と述べている。
一方、COVID-19重症患者に対する高用量ビタミンCの有効性については、2件の臨床試験(LOVIT-COVIDとREMAP-CAP)を組み合わせて検討された。対象は、20カ国のCOVID-19による入院患者2,590人で、重症患者と非重症患者の双方が含まれていた。その結果、ビタミンCが臓器サポートを要する日数の短縮や生存に寄与する可能性は低いことが示された。
ビタミンCに関する試験の共同代表である、サニーブルック・ヘルスサイエンスセンター(カナダ)のNeill Adhikari氏は、「この結果は、COVID-19入院患者に対するビタミンCの使用は控えるべきことを示している」と述べている。また、本試験の別の共同代表である、シャーブルック大学(カナダ)のFrancois Lamontagne氏は、「現時点で利用可能な治療法のうち、患者にとって有益性がなく、かえって有害な影響を与え得る治療法を特定し、それを中止することには健康と経済の両面でメリットがある。今回の臨床試験の結果はその重要性を示したものだ」と述べている。
REMAP-CAPの米国の研究責任者で米ピッツバーグ医療センター(UPMC)集中治療医学部長のDerek Angus氏は、「REMAP-CAPから2つの結果が論文として同時に掲載されたことは、REMAP-CAPが複数の介入方法を効率的に評価できることの証しともいえる」と説明。「この恐ろしいパンデミックを通じて、われわれは治療に関するいくつかの大きな疑問に迅速に対処するための新しい方法を開拓し、今いる患者の治療に取り組み、将来、より機敏に対応するための準備をしてきた」と述べている。
[2023年10月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら