お金で幸せは買えないかもしれないが、人生の満足度を高める一助にはなり得ることが、新たな研究で示された。米国立保健統計センター(NCHS)が2021年に実施した調査で、「自分の人生に不満がある」と回答した米国成人はわずか4.8%だったが、そのような回答をした人は、世帯所得が連邦貧困水準の200%未満〔4人家族の場合、年間約5万5,000ドル(1ドル151円換算で830万5,000円)未満に相当〕の世帯の人に多いことが明らかになったのだ。NCHSのAmanda Ng氏らによるこの研究の詳細は、「National Health Statistics Reports」に11月2日掲載された。
Ng氏らはこの研究で、NCHSの2021年の米国国民健康調査(National Health Interview Survey;NHIS)のデータを用いて、人生に不満を感じている人の割合を、年齢、性別、人種(アジア系/黒人/白人/ヒスパニック系)、出生地(米国/米国の領土)ごとに調べた。
その結果、全体で4.8%の調査参加者が、人生に不満を感じていた(「不満」3.7%、「大いに不満」1.1%)のに対し、95.2%は人生に満足している(「満足」46.6%、「大いに満足」48.6%)ことが明らかになった。人生に不満を感じていると回答した人の割合は、男性の方が女性よりも高く(5.1%対4.6%)、年齢層による違いも見られた(18〜44歳で4.4%、45〜64歳で5.5%、65歳以上で4.8%)。人種別では、人生に不満を感じていると回答した人の割合は黒人で最も高く(6.0%)、その後は、白人(4.9%)、ヒスパニック系(4.1%)、アジア系(3.1%)の順だった。出生地別では、米国出身の人の方が米国領土出身の人よりも不満を報告した人の割合が有意に高かった(5.0%対3.7%)。
調査参加者を世帯所得が連邦貧困水準の200%未満か200%以上かで分類すると、人生に不満を感じていると回答した人の割合は、200%未満の人で8.1%、200%以上の人で3.6%であった。また、世帯所得が連邦貧困水準の200%未満の人の中で人生に不満を感じている人の割合は、男性(9.3%)の方が女性(7.2%)よりも、45〜64歳(11.1%)の方が18〜44歳(6.8%)と65歳以上(7.2%)よりも、白人(9.7%)と黒人(9.0%)の方がアジア系(4.7%)とヒスパニック系(5.0%)よりも、米国出身の人(9.2%)の方が米国領土出身の人(4.7%)よりも有意に高かった。これに対して、世帯所得が連邦貧困水準の200%以上の人では、このような人口統計学的属性による有意な差は認められなかった。
米ジョージ・メイソン大学幸福度向上センターのJames Maddux氏は、「所得に関する今回の調査結果は、これまでの多くの研究報告と一致している」と話す。同氏は、世界規模での研究により、経済的に豊かではない国に住む人では、豊かな国に住む人よりも生活満足度が低い傾向にあることが示されていると指摘し、「生活満足度は、清潔な水が手に入り、居住環境が安定し、食の安全が保障され、医療へのアクセスが改善するなど、生活環境が整っていくにつれ上昇するものだ」と説明する。同氏はさらに、「同じことが個人にも当てはまる。家賃や医療費の支払い、食料の購入費に不安がある状況下で生活に満足を感じることなどできるはずもない。しかし、生活の基本をまかなうための十分な経済基盤があれば、人生の満足度は向上する」と話す。同氏によると、人生の満足度は通常、収入の増加とともに上昇するが、ある時点でそのペースは鈍化し、最終的には平坦化するという。
Maddux氏は、周囲への見せびらかしや競争心から豪邸や高級車などを購入しても心が満たされる可能性は低く、「顕示的消費は、実際には人々の幸福度を低下させる傾向がある」と話す。それに対して、教育や慈善事業、自己満足のための旅行など、自分にとって意味のあるものに投資すれば、人生の満足度を高めることができると話す。
さらに、本研究では比較的高所得の人でも3〜4%の人は人生に不満を感じていることが示された。この結果についてMaddux氏は、「人生の満足度は、家族や友人と強い絆を築くこと、目的意識を持つこと、他人と自分を比較しないこと、すでに持っているものに感謝することなど、収入以外の要素に左右されるものだ」と語っている。
[2023年11月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら