体づくりのためにプロテインサプリメント(以下、プロテインサプリ)を摂取している男性の多くは、このサプリが生殖機能に悪影響を及ぼす可能性について認識していないことが、英バーミンガム大学のMeurig Gallagher氏らの調査から明らかになった。こうしたサプリには、生殖機能に影響を及ぼす可能性がある女性ホルモンのエストロゲンが高用量含まれている。しかし調査からは、ジムに通う男性の約5人に4人(79%)がフィットネス計画の一つとしてホエイプロテインや大豆プロテインなどのサプリを摂取しており、また、プロテインサプリの摂取が生殖機能に与える影響について考えたことがある男性はわずか14%にとどまることが示された。詳細は、「Reproductive BioMedicine」に10月18日掲載された。
Gallagher氏は、「女性ホルモンの過剰摂取は、男性の精子の量や質に問題を生じさせる可能性がある」と指摘。また、市販されている多くのプロテインサプリには、アナボリックステロイドが含まれているため、プロテインサプリを使用している男性は、意図せず自分にステロイドを投与している可能性があることも付け加えている。アナボリックステロイドは、精子の数の減少や精巣の縮小、勃起障害をはじめとするさまざまな問題を引き起こし得るという。
Gallagher氏らは今回、153人の男女(男性71人、女性82人、145人が18〜25歳)から得られたオンライン調査の回答を用いて、ジム通いに関わる因子と男性の生殖機能との関連を検討した。これらの男女のうち、男性の79%(56人)、女性の56%(46人)がプロテインサプリを使用したことがあるか、現在使用していると回答していた。また、プロテインサプリ使用者が挙げたサプリの使用目的として最も多かったのは筋肉増強(男性95%、女性65%)であり、次に多かったのは栄養補給(男性41%、女性37%)であった。
質問項目の中の「自分の生殖機能について考えたことがある」に対して「とても当てはまる/当てはまる」と答えた男性は52%に上った。しかし、「ジム通いやプロテインサプリの摂取が男性の生殖機能に及ぼす影響について考えたことがある」に対して「とても当てはまる/当てはまる」と回答したのはわずか14%にとどまっていた。また、「現時点では、ジム通いやプロテインサプリの使用により得られるメリットは生殖機能への影響よりも重要だ」に対して「とても当てはまる/当てはまる」と回答した男性の割合は28%、「全く当てはまらない/当てはまらない」と回答した男性の割合は38%だった。さらに、75%の男性は、アナボリックステロイドの使用が生殖機能に影響を及ぼすことを認識していたが、プロテインサプリの摂取が有害となり得ることを知っていた人はわずか11%であった。
論文の共著者である、バーミンガム大学生殖生物科学教授のJackson Brown氏は、「男性は、きっかけがあれば自分の生殖機能に関心を持つが、自発的にそのことを考えたりはしないことが分かった。この背景には、社会全体が依然として生殖機能を『女性の問題』と捉え、男性の生殖機能は生涯にわたって変化しないと誤解していることが関係していると考えられる」と同大学のニュースリリースで述べている。Gallagher氏も、「世界保健機関(WHO)によると、世界で6人に1人が不妊症の問題を抱えており、この問題に対する懸念は高まりつつある。しかし、こうした不妊症の症例の半数は男性に要因があるという事実は十分に認識されていない」と指摘する。
ただしBrown氏は、「今回の研究結果は、体づくりに励んでいる人がジム通いをやめるべきであることを意味するものではない」と強調している。同氏は、「この研究結果を、健康的になること、あるいは運動することを否定する理由の一つと捉えるべきではない。重要なのは、プロテインであれビタミン剤であれ、自分が摂取しているサプリについて自ら学ぶようにすべきだということだ」と話している。
[2023年12月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら