緊急避妊薬の市販化に伴い女性の救急外来受診が激減

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2024/02/22

 

 米食品医薬品局(FDA)が緊急避妊薬を処方箋なしで購入できる市販薬として承認したことが、米国の病院に予期せぬ好ましい「副作用」をもたらしたことが、新たな研究で報告された。緊急避妊薬の市販化により、女性の緊急避妊に関連した救急外来(ED)受診が96%も減少し、それに伴い医療費も大幅に削減されたことが明らかになったのだ。米ミシガン大学医学部産婦人科教授のErica Marsh氏らによる研究で、詳細は「JAMA Network Open」に1月26日掲載された。

 24時間受診可能で高度な医療を提供するEDは、緊急避妊を必要とする女性に対し重要な役割を果たしている。米国では、緊急避妊薬は1998年に初めてFDAにより承認され、翌年には二つ目の緊急避妊薬であるPlan B(一般名レボノルゲストレル)が承認された。その後、2006年には単回投与版のレボノルゲストレル(Plan B One-Step)が承認されるとともに、18歳以上の成人向けにPlan Bの市販が、2013年にはPlan B One-Stepの未成年に対する市販が承認された。さらに、2012年には、アフォーダブルケア法(患者保護及び医療費負担適正化法、通称オバマケア)により、緊急避妊薬を保険適用とすることが義務付けられた。

 この研究では、ED受診に関する2006年から2020年の全国データを用いて、15歳から44歳の女性による緊急避妊に関連したED受診が、上述のFDAの承認に伴いどのように変化したかが調査された。

 その結果、この期間に総計4万7,858件の緊急避妊関連のED受診が発生していたが、受診件数は年を追うごとに減少する傾向にあることが明らかになった。具体的には、緊急避妊関連のED受診件数は、2006年には1万7,019件だったのが2020年には659件と96%も減少していた。このようなED受診件数の減少に伴い、緊急避妊関連の医療費も、2006年の720万ドル(1ドル146円換算で10兆5120万円)から2020年には38万5,946ドル(同5634万8,116円)へと95%削減されていた。

 また、米国北東部の病院では、緊急避妊関連以外のED受診については米国全体での受診の17.1〜19.1%を占める程度だったが、緊急避妊関連のED受診については米国全体での受診の43.9〜58.6%を占めていた。一方、南部の病院では、前者が41.0〜42.6%を占めていたのに対して、後者はわずか4.5〜17.4%を占めるに過ぎなかった。

 さらに、緊急避妊関連でEDを受診した女性には、年齢が若い、黒人またはヒスパニック系、メディケイド加入者などの特徴があることも判明した。Marsh氏は、「緊急避妊のためにEDを受診する人は、特定の人口統計学的属性を有する人に偏っていることが明らかになった」と指摘。「これは、一部の人では、緊急避妊薬を入手する上で障壁が依然として存在することや、性的暴行などの理由によるED受診が増加していることを示唆した、外来患者を対象にした過去の調査結果と一致している」と話す。

 Marsh氏は、「われわれが得た分析結果は、市販の緊急避妊薬の入手に格差が存在することを示唆するものだ。一部の人々の前に立ちはだかる障壁を取り除き、安全な緊急避妊薬を全ての人が手頃な価格で入手できるようにする政策を講じる必要がある」と述べている。

[2024年1月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら