ワクチンを複数回接種する際には、接種する腕を同じ側にするのではなく交互にかえることで、より高い効果を得られる可能性があるようだ。新型コロナワクチンの2回目接種時に接種する腕を逆にした人の方が、同側の腕に接種した人よりも免疫力が高いことが確認された。米オレゴン健康科学大学の感染症専門医であるMarcel Curlin氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Clinical Investigation」に1月16日掲載された。
研究グループは、「新型コロナワクチンに関しては、パンデミック時にすでに何百万人もの米国人が複数回の接種を受けたので、今回の研究で得られた知見はもはやさほど重要ではないかもしれないが、小児用予防接種を含む複数回接種のワクチン全てに影響を与える可能性がある」述べている。
今回の研究でCurlin氏らは、新型コロナワクチンを2回接種した947人(平均年齢44.5歳、女性73%)を対象に、2回目接種を初回と同じ腕に受けた場合(同側)と反対側の腕に受けた場合(対側)とで血清中の特定の抗体反応がどのように変わるのかを評価した。対象者のうち507人は同側に、440人は対側に接種を受けていた。
その結果、対側群では同側群に比べて新型コロナウイルスに特異的な抗体の抗体価(以下、総抗体価)が時間とともに有意に増加しており、2回目接種の後(約21日後)で1.2倍(P=0.020)、3回目接種の直前(0.5日前、2回目接種から約8カ月後)と接種後(2回目接種から約14カ月後)では1.4倍(P<0.001)であることが示された。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)に特異的な抗体(IgG抗体)についても、3回目接種直前で同側群の1.2倍(P=0.004)、3回目接種後で1.3倍(P=0.021)と同様の傾向が認められた。
次に、年齢、性別、ワクチンの接種間隔を一致させた54組の抗体価の推移を検討した。その結果、対側群の総抗体価とIgG抗体価は、3回目接種直前で同側群の1.7倍と1.5倍、3回目接種後で1.3倍と1.7倍であることが示された。さらに、初期の新型コロナウイルスに近い擬似ウイルスと、南アフリカで2021年11月に最初に報告されたオミクロン変異株(B.1.1.529)に対する中和抗体価を調べたところ、3回目接種直前では擬似ウイルスに対する中和抗体価について対側群と同側群の間に有意差は認められなかった。しかし3回目接種後では、対側群での擬似ウイルスに対する中和抗体価は同側群の約2倍、また、B.1.1.529に対する中和抗体価は約3.5〜4倍、有意に高かった(いずれもP<0.001)。
Curlin氏は、「この結果についてはさらに詳しく調査する必要があるため、現時点で、2回目は初回と反対側の腕に接種するべきだと推奨するつもりはない」と述べつつも、「全ての条件が同じであれば、反対側の腕に接種することを検討すべきだ」と話している。
一方、トロント大学(カナダ)免疫学分野のJennifer Gommerman氏はNew York Times紙に対し、「カナダでの新型コロナワクチン接種で行われたように、接種間隔を3カ月から4カ月に延長する方が、接種する腕の切り替えを行うよりも大きなベネフィットをもたらす可能性がある」と語る。同氏はさらに、「免疫不全患者にとっては、免疫力を高める助けになることなら何であれ試してみて損はない」ため、こうした接種方法の効果を研究する価値はあるとの見方を示している。
[2024年2月6日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら