新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症ワクチン「BNT162b2」の2回接種レジメンでは上腕の三角筋に順次投与されるが、2回目の投与を同側の腕に行うか反対側の腕に行うかによる免疫学的影響については、これまでほとんど注意が払われてこなかった。ドイツ・ザールラント大学のLaura Ziegler氏らは、どちらの腕に投与するかがワクチンによって誘導される液性免疫および細胞性免疫に異なる影響を及ぼすかどうかを検討した観察研究の結果を、eBioMedicine誌2023年8月11日号に報告した。
SARS-CoV-2感染歴のない303人が集められ、同側(147人)または対側(156人)のいずれかにBNT162b2の2回目接種を受けた。スパイク特異的IgG抗体価、IgG-avidityおよび中和抗体価は、投与2週間後にELISA法およびサロゲートアッセイを用いて定量した。143人のサブグループ(同側64人、対側79人)について、フローサイトメトリー法を用いてスパイク特異的CD4およびCD8 T細胞を分析した。
主な結果は以下のとおり。
・スパイク特異的IgG抗体価の中央値は、同側と対側で差はなかった(4,590BAU/mL[IQR:3,438] vs.4,002BAU/mL[IQR:3,524]、p=0.106)。
・IgG-avidityも同様に差はなかった(39.5%[IQR:11.5%] vs.41.9%[IQR:10.5%]、p=0.056)。
・一方、中和活性は対側で有意に低かった(69.0%[IQR:33.0%] vs.65.0%[IQR:33.8%]、p=0.024)。
・同様に、スパイク特異的CD8 T細胞レベルは対側で有意に低く(p=0.004)、CD8 T細胞が検出可能な人の割合は、同側ワクチン接種後よりも対側ワクチン接種後で有意に低かった(67.2% vs.43.0%、p=0.004)。
・スパイク特異的CD4 T細胞レベルは両群で同程度であったが、対側ワクチン接種後に有意に高いCTLA-4発現を示した(p=0.011)。
・ポリクローナルに刺激されたT細胞レベルに差がなかったことから、これらの影響はワクチン特異的なものと考えられた。
著者らは、同側でも対側でも強力な免疫応答が誘導されるが、2回目接種で初回と同じリンパ節による排出を可能にするワクチン投与経路を選択した場合により顕著になるとし、より高い中和活性とより高いスパイク特異的CD8 T細胞レベルは、感染や重症化からの防御に関係すると考えられ、多くの場合選択されていると考えられる同側接種を支持する結果とまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)