プライマリケア医やナース・プラクティショナー(医師の指示なしで一定の治療や治療が可能な看護師)が不足している地域に住む米国人は、緊急手術が必要になったり合併症を発症したりするリスクの高いことが、新たな研究で明らかになった。こうした人では、退院後に再入院するリスクが高いことも示された。米ミシガン大学外科学分野のSara Schaefer氏らによる研究で、詳細は「Health Affairs」3月号に掲載された。
Schaefer氏は、「潜在的な問題を特定し、画像診断や手術のために患者を専門病院などへ紹介するプライマリケア提供者の役割は、迅速に対処すべき問題が緊急事態に陥るのを防ぐ上で大きな違いを生む可能性がある」とミシガン大学のニュースリリースの中で述べている。
この研究では、連邦政府が2015〜2019年の間にプライマリケア提供者不足を指摘していた地域において、処置のタイミングが極めて重要な疾患に対する手術(結腸がんの結腸切除術、腹部大動脈瘤の修復術、腹壁瘢痕ヘルニアの修復術)を受けたメディケア受益者のデータが調査された。対象地域を不足のレベルに応じて5群に分類し、それぞれの群での待機的手術と緊急手術の割合を調べて比較した。
その結果、緊急手術が必要となった手術の割合は、不足レベルが深刻な地域で37.8%であったのに対し、不足レベルが最も軽度だった地域では29.9%であることが明らかになった。また、前者では後者に比べて、重篤な合併症の発生率(14.9%対11.7%)や再入院(15.7%対13.5%)のリスクが高いことも示された。
研究グループは、「この研究結果は、プライマリケア提供者の数を増やし、プライマリケア提供者が不足している地域で診療を行うようにさせる取り組みの重要性を強調するものだ」と述べている。なお、今回の研究でプライマリケア提供者が不足していると判断された国勢調査区の58%は農村部であったという。
Schaefer氏は、「この取り組みを進める上で重要な手段となるのが、医師や他の医療提供者の教育関連の負債を軽減するためのローン免除や再構築プログラムだ。専門的な分野よりもプライマリケアをキャリアとして選択することを奨励してプライマリケア提供者の数を増やし、不足地域での診療を促進することにより、最終的には、そうした地域に住む人にタイミングが重要な手術が必要となった際に、より良い転帰をもたらすことにつながるだろう」と述べている。
Schaefer氏はさらに、この研究結果には、プライマリケア提供者が不足している地域に住む人に対する重要なメッセージも含まれていると話す。同氏は、「それは、たとえ時間がかかっても定期的なケアのためにプライマリケア提供者を見つけること、そして、新たな症状に注意を払い、かかりつけの医師との対話の中でどうすれば症状に対する関心を高められるのかを知っておくことも重要だ」と具体的に説明している。一方、外科医に対しては、プライマリケア提供者の不足が理由で緊急手術を受けることになる患者がいると認識することの大切さを強調し、「外科患者のケアにおけるパートナーとしてのプライマリケア医の役割は、強調してもし過ぎることはない」と述べている。
[2024年3月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら