平日は睡眠不足で週末に寝だめしたり、あるいは一晩中寝返りを打って過ごし、朝は頭がはっきりしないといったことがないだろうか。それとも、睡眠時間は十分に確保できているだろうか。米ペンシルベニア州立大学、睡眠・ストレス・健康(STEALTH)研究室のSoomi Lee氏らが、米国の全国調査参加者約3,700人を対象に、およそ10年の間隔を空けた二つの時点のデータを分析したところ、睡眠習慣は四つの異なるパターンに分類できることが明らかになった。この研究結果は、「Psychosomatic Medicine」に2月16日掲載された。
Lee氏は、「睡眠は、毎日繰り返し行う行動である。より良い睡眠習慣は、社会的な関係や仕事のパフォーマンスの向上から、長期的な健康行動や健康的な老化の促進まで、多くの重要な違いを生み出すことにつながる」と話す。
この研究では、Midlife in the United States研究のデータを用いて、研究参加者3,683人から、2004〜2006(T1)年と2013〜2017年(T2)の2回に分けて収集された睡眠習慣と慢性的な健康上の問題に関するデータの分析が行われた。データには、参加者の自己報告による睡眠の規則性や睡眠時間などの睡眠習慣、睡眠に対する満足度、覚醒度、慢性疾患の数や種類などに関する情報が含まれていた。
分析により、睡眠習慣によって対象者を以下の四つの異なるパターンに分類できることが明らかになった。
・良い睡眠習慣保持者:二つの時点のいずれでも最適な睡眠習慣を維持している。
・週末に睡眠を取り戻す人:睡眠が不規則で、平均睡眠時間は短いが週末や仕事のない日の睡眠時間は長い。
・不眠症の人:睡眠時間が短く、日中はひどい疲労感に襲われ、入眠までに時間がかかるなどの不眠症の症状を抱えている。
・昼寝の習慣がある人:夜間の睡眠は概ね良好であるが、昼寝をすることが多い。
対象者の半数以上は、不眠症であるか昼寝の習慣を持っていた。また、77%の参加者はT1とT2の間に同じ睡眠習慣を維持しており、特に不眠症か昼寝の習慣を持っている人は、時間の経過とともに睡眠習慣が変わる可能性が最も低かった。さらに、T1とT2の両時点で不眠症だった人では、両時点ともに良い睡眠習慣を維持していた人に比べて、心血管疾患、糖尿病、うつ病、フレイルのリスクが72〜188%高かった。この他、年齢は睡眠に関連しないようであった一方で、高齢者や定年退職者の中には昼寝の習慣を持っている人が多く、さらに、教育歴の低い人や失業者には不眠症の人が多いことも示された。
研究グループは、「この研究は、主に健康な成人を対象としているため、全人口を代表するサンプルではなかった可能性がある。それでも、ほとんどの対象者は最善の睡眠習慣を持っておらず、過半数が不眠症であるか日中に睡魔に襲われて昼寝をする人であった」と話す。
Lee氏は、「われわれが得た結果は、睡眠習慣を変えることは非常に難しいことを示唆している可能性がある。また、睡眠の重要性や睡眠の健康行動に関する理解が広まっていないことを表している可能性もある」と述べている。その上で同氏は、良質な睡眠の健康に関する教育の大切さを強調し、「寝る前にベッドの中で携帯電話を使わない、定期的に運動をする、午後遅くにカフェインを摂取しないなど、睡眠を改善するためにできる睡眠衛生行動がある」と説明している。
研究グループは、「良質な睡眠を促すための介入が大いに必要とされている。介入により睡眠の問題点を明らかにすることで、慢性疾患のリスクや経済的脆弱性などの要因に基づいて介入策のターゲットを絞ることができる可能性がある」と結論付けている。
[2024年3月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら