腸内での酪酸産生菌の増加は感染症リスクの低下と関連

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/05/02

 

 腸内で酪酸産生菌が10%増えるごとに、感染症による入院リスクが14〜25%低下することが、オランダとフィンランドの大規模コホートを対象にした研究で明らかになった。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRobert Kullberg氏らによるこの研究結果は、欧州臨床微生物学・感染症学会(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表予定。

 酪酸は、ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉」の腸内細菌が食物繊維を分解・発酵させる際に産生される短鎖脂肪酸の一種である。米クリーブランド・クリニックの説明によると、酪酸は大腸の細胞が必要とするエネルギーの大部分(約70%)を供給しており、消化器系の健康に重要な役割を果たしているという。

 重症の感染症による入院患者において腸内細菌叢に変化が生じることは珍しくなく、また、前臨床モデルでは、好気性の酪酸産生菌が全身感染症に対して保護効果を持つことが示されている。酪酸産生菌は入院患者では減少していることが多く、またこれらの菌は感染症以外の腸疾患に対しても保護効果を持つ可能性が考えられることから、これまで酪酸産生菌に焦点を当てた研究が実施されてきている。しかし、腸内細菌叢が大きく変化することで重症感染症に罹患しやすくなるのかについては、明確になっていない。

 今回の研究では、総計1万699人から成るオランダとフィンランドの2つの大規模コホート(オランダコホート4,248人、フィンランドコホート6,451人)を対象に、ベースライン時の腸内細菌叢とその後の感染症関連の入院リスクとの関連が検討された。試験参加者の便サンプルを用いて腸内細菌のDNAシーケンス解析を行い、腸内細菌叢の組成や多様性、酪酸産生菌の相対存在量を評価した。さらに、国の登録データを用いて、便サンプルの採取から5〜7年間の追跡期間中に生じた感染症による入院または死亡について調査した。

 追跡期間中に総計602人の参加者(オランダコホート152人、フィンランドコホート450人)が感染症(多くは市中肺炎)により入院または死亡していた。腸内細菌叢と感染症リスクとの関連を検討したところ、腸内細菌叢の中に占める酪酸産生菌の量が10%増えるごとに感染症による入院リスクは、オランダコホートでは25%、フィンランドコホートでは14%低下することが明らかになった。このような結果は、人口統計学的属性やライフスタイル、抗菌薬曝露や併存疾患で調整して解析しても変わらなかった。

 こうした結果を受けてKullberg氏は、「ヨーロッパの2つの独立したコホートを用いたこの研究で、腸内細菌叢の組成、特に酪酸産生菌の定着は、一般集団の感染症による入院予防と関連していることが示された」と結論付けている。

 研究グループは、「今後の研究では、腸内細菌叢を調整することで重症感染症のリスクを低減できるかどうかを検討する必要がある」と述べている。ただ残念なことに、酪酸産生菌は酸素を嫌う嫌気性細菌であるため、これらの貴重な細菌を腸内に取り込むことは困難であるという。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

[2024年3月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら