乳がんサバイバーは、その後、再発ではなく新たに別のがん(二次がん)を発症するリスクが高い可能性のあることが、英ケンブリッジ大学公衆衛生学・プライマリケア学部のAntonis Antoniou氏らによる研究で示された。Antoniou氏らは、乳がんサバイバーが実際に二次がんを発症する絶対リスクは低いことを強調しつつも、乳がんの罹患歴がない人と比べた場合の相対リスクは高いことが明らかになったと述べている。詳細は、「The Lancet Regional Health - Europe」に4月24日掲載された。Antoniou氏は、「この研究は、乳がんサバイバーの二次がん発症リスクについて調べた、これまでで最大規模のものだ」と説明している。
Antoniou氏らは今回、英国のがん登録データ(National Cancer Registration Dataset;NCRD)などを用いて、1995年1月1日から2019年12月31日の間に初めて乳がんと診断された女性58万1,403人と男性3,562人の乳がんサバイバーのデータを分析した。
Antoniou氏らはまず、最初に乳がんと診断されたときにはがんがなかった側(対側)の乳房に新たにがんが見つかるリスクを調べた。その結果、乳がんサバイバーでは、乳がんの罹患歴がない人に比べて対側の乳房に乳がんが発生するリスクが、女性では約2倍〔標準化罹患比(SIR)2.02、95%信頼区間(CI)1.99〜2.06〕、男性では約55倍(同55.4、35.5〜82.4)であることが示された。他のがん種に関しては、乳がんサバイバーの女性では乳がんの罹患歴がない女性と比べて子宮体がんの発症リスクが87%、骨髄性白血病の発症リスクが58%、卵巣がんの発症リスクが25%高かった。
さらに、乳がん診断時の年齢も二次がん発症リスクに関係することが明らかになった。乳がん診断時の年齢が50歳以上だった女性では、対側の乳房の乳がんも含めたあらゆる二次がんを発症するリスクは17%(SIR 1.17、95%CI 1.16〜1.18)の上昇にとどまっていたが、診断時の年齢が50歳未満の女性ではそのリスクは86%(同1.86、95%CI 1.82〜1.90)高いことが示された。乳がん診断時の年齢がその後の二次がんリスクに関係する理由についてAntoniou氏らは、若いときに乳がんを発症する女性は、より高年齢で乳がんを発症する女性と比べてBRCA1/2のようながん関連遺伝子の病原性変異体の割合が高く、また、これらの変異体を持つ女性では、対側の乳房の乳がんを始め卵巣がん、膵臓がんなどの発症リスクが高まるとの報告のあることに言及している。
このほか、社会経済的な状況も二次がんの発症リスクに関係している可能性のあることが示唆された。例えば、社会経済的に最も貧しい地域に住む乳がんサバイバーの女性では、最も豊かな地域に住む乳がんサバイバーの女性と比べて二次がんを発症するリスクが35%高いことが示された。
研究論文の筆頭著者であるケンブリッジ大学のIsaac Allen氏は、「この研究結果は、社会経済的に不利な状況に置かれた人が経験する健康格差の存在を裏付けるさらなるエビデンスとなるものだ」と指摘。その上で、「何らかの介入によってこのような二次がんリスクを低下させるため、これらの人で二次がんリスクが高い理由を完全に理解する必要がある」と述べている。
[2024年4月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら