セマグルチド投与で心不全患者の利尿薬必要量が減少

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/05/30

 

 心不全患者の体内には水分がたまりやすいため、過剰な水分を排出する作用のあるループ利尿薬がしばしば処方される。こうした中、画期的な肥満症治療薬であるセマグルチド(商品名ウゴービ)によって利尿薬の必要性を減らせる可能性のあることが、肥満を伴う収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者を対象とした臨床試験のデータの解析で示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部准教授のKavita Sharma氏らによるこの解析結果は、欧州心臓病学会(ESC)による欧州心不全学会(Heart failure 2024、5月11~14日、ポルトガル・リスボン)で発表され、「European Heart Journal」に5月13日掲載された。

 ESCのニュースリリースによると、心不全の代表的なタイプの一つであるHFpEFでは、全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能は正常に保たれているものの、筋肉が硬くなって広がりにくくなる。そのため、全身から心臓に血液が戻りにくくなり、全身が必要とする酸素を豊富に含んだ血液を送り出すことができなくなるという。

 Sharma氏らは今回、肥満(BMI 30以上)だが糖尿病のないHFpEF患者529人を対象としたSTEP-HFpEF試験と、肥満で糖尿病のあるHFpEF患者616人を対象としたSTEP-HFpEF-DM試験の二つの臨床試験の参加者(計1,145人)のデータを統合して解析した。試験開始時点で利尿薬を使用していなかったのは220人で、223人がループ利尿薬以外の利尿薬、702人がループ利尿薬を使用していた。参加者は52週間にわたって週1回、セマグルチド2.4mgまたはプラセボを皮下注射する群にランダムに割り付けられていた。

 その結果、セマグルチド群ではプラセボ群に比べて、心不全に関連した症状や身体的制限に関する標準的な評価尺度であるカンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の改善度が大きく、特に利尿薬使用患者で大きな改善が認められた(プラセボ群と比べたKCCQ-CSSの平均差は、利尿薬使用患者で+9.3、利尿薬非使用患者で+4.7)。また、試験開始時からの体重変化率はプラセボ群と比べてセマグルチド群で大きく、プラセボ群との差(平均)は、利尿薬非使用患者で-8.8%、ループ利尿薬の使用量が最も多かった患者で-6.9%であることが示された。

 さらに、セマグルチドの使用は6分間歩行距離などの他の心不全の指標の改善にも関与している可能性が示されたほか、ループ利尿薬の使用量に大きな影響を及ぼすことが判明した。すなわち、試験期間中にプラセボ群ではループ利尿薬の使用量が平均で2.4%増加していたのに対し、セマグルチド群では平均で17%減少していたという。このほか、同試験では、利尿薬の使用状況によって分類したサブグループの全てにおいて、セマグルチド群ではプラセボ群と比べて重篤な有害事象が少ないことも示されたと、研究グループはESCのニュースリリースの中で述べている。

 Sharma氏は全体的な結果として「利尿薬使用の有無にかかわりなく、HFpEF患者において、セマグルチドは症状や身体的制限を改善するとともに、体重をより減少させることが示された」と説明している。

 さらにSharma氏は、セマグルチドを投与された患者では、プラセボを投与された患者と比べて、利尿薬の平均使用量が減少し、利尿薬の投与量が増加する可能性が低下し、利尿薬の投与量を減らす必要性が増加する可能性が示されたことに言及。「これらのパラメーターは、セマグルチドの疾患修飾作用と、この試験の対象者と同様の条件を満たす患者集団において、同薬が長期的な臨床アウトカムの改善に関連する可能性を示唆している」と述べている。

[2024年5月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら