尿失禁は産後の後遺症として頻発する症状の1つだが、新米の母親に重大な影響を与える可能性のあることが、米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センター産科婦人科教授のDavid Rahn氏らによる研究で示された。Rahn氏らによると、こうした産後の尿もれ症状が不安や抑うつ症状に有意に関連していることが明らかになったという。この研究結果は、「Urogynecology」に4月30日掲載された。
Rahn氏は、「尿失禁がひどいと、孤立感や恥ずかしさを感じ、社会的なつながりを持つことが難しくなる。尿失禁によって精神的な問題に苦しむようになる可能性のあることは想像に難くない」と話す。
Rahn氏らは今回の研究で、米ダラス郡の妊娠後ケアプログラムに参加した、母親になったばかりの女性419人の出産から12カ月後の追跡データを分析した。その結果、参加者の32.5%が、咳やくしゃみ、ジャンプしたときなどに尿がもれてしまう「腹圧性尿失禁」を経験していた。さらに、16.5%には膀胱に尿が完全にたまっていない状態であっても急に我慢できない尿意を覚えて尿をもらしてしまう「切迫性尿失禁」も認められた。このほか、9人中1人に全般的な煩わしい排尿関連の症状のあることが明らかになった。
解析の結果、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁のいずれに関しても、巨大児の出産や合併症を伴う分娩といった従来のリスク因子との関連は認められなかった。しかし、腹圧性尿失禁は、母親の出産時のBMIが高いこと、出産から12カ月時点での抑うつスコアが高いことに関連していた。また、切迫性尿失禁は、過去の出産回数が多いこと、出産から12カ月時点での不安スコアが高いことに関連していた。
Rahn氏とともに研究を主導したUTサウスウェスタン医療センター泌尿婦人科学フェローのSonia Bhandari Randhawa氏は、「産後ケアに携わっている医師は、産後の女性に尿失禁の有無や精神衛生の状態について必ず尋ねるべきだ」と主張している。同氏はさらに同大学のニュースリリースの中で、「じっくり話し合う時間がなかったとしても、尿失禁や抑うつ症状、不安について医師が質問することは極めて重要だ」と指摘し、「これらは治療可能な疾患であり、適切な紹介によって治療につなげることは患者の生活を大きく変える可能性がある」と述べている。
[2024年7月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら