X世代(1965年から1980年の間に生まれた世代)とミレニアル世代(1981年から1990年代半ば頃までに生まれた世代)でがん罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかにされた。若い世代ほど、34種類のがんのうちの17種類の罹患率が上昇していることが示されたという。米国がん協会(ACS)のサーベイランス・健康公平性科学の上級主任研究員であるHyuna Sung氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Public Health」8月号に掲載された。
今回の研究でSung氏らはまず、2000年1月1日から2019年12月31日の間の、34種類のがんの罹患率と25種類のがんによる死亡率のデータを入手した。このデータは、2365万4,000人のがん罹患者と734万8,137人のがんによる死亡者で構成されていた。Sung氏らは、これらの人を、1920年から1990年までの5年ごとの出生コホートに分け、出生コホート間でがんの罹患率比(IRR)と死亡率比(MRR)を計算して比較した。
その結果、世代を追うごとに34種類のがんのうちの17種類でIRRの増加傾向が認められ、このうちの8種類のがんでは出生コホートの影響が有意であることが示された。特に、男女にかかわらず、1990年生まれのコホートの小腸がん、腎臓・腎盂がん、および膵臓がんのIRRは1955年生まれのコホートの2〜3倍に達していた(IRRは同順で、3.56、2.92、2.61)。また、女性では、肝臓がん・肝内胆管がんのIRRも2倍であった(IRR 2.05)。さらに、残りのエストロゲン受容体陽性乳がん、子宮体がん、大腸がん、非噴門部胃がん、胆嚢がん・その他の胆管がん、卵巣がん、精巣がん、男性の肛門がん、男性のカポジ肉腫の9種類のがんについては、古い世代で減少傾向が認められた後に、若い世代での増加傾向が認められた。がんの罹患率が最も低い世代と比べた1990年生まれのコホートでの罹患率上昇には、卵巣がんでの12%から子宮体がんでの169%までの幅があった。
MRRは、肝臓がん・肝内胆管がん(女性)、子宮体がん、胆嚢がん・その他の胆管がん、精巣がん、大腸がんについては、若い出生コホートでIRRの増加に伴い増加が認められたが、ほとんどのがん種で、若い出生コホートでのMRRは減少するか一定であった。
Sung氏は、「これらの知見は、最近増加しつつある、ベビーブーマー以降の世代でのがんリスクの増加を示すエビデンスに新たに加わるものだ。これまで、若年発症の大腸がんといくつかの肥満関連のがんの若い世代での発症増加が報告されていたが、今回の結果は過去のこの知見を広げる、より広範ながん種を網羅している」と述べている。
本論文の上席著者である、ACSのサーベイランス・健康公平性科学のシニアバイスプレジデントであるAhmedin Jemal氏は、「このような若年層におけるがん死亡率の増加は、がんリスクの世代交代を示すものであり、しばしば、国が今後追うことになるがん負担の早期指標となる」と述べている。またJemal氏は、「このデータは、X世代とミレニアル世代における根本的なリスク因子を特定し、予防戦略に反映させる必要性を強調するものだ」と主張する。
本研究には関与していない、ACSがんアクションネットワーク(ACS CAN)会長のLisa Lacasse氏は、「この研究結果は、米国の中年および若年層における包括的なヘルスケアの必要性をも浮き彫りにするものだ。若い世代でのがんの負担増加は、がんの転帰の重要な要因である手頃な包括的医療保険へのアクセスを年齢を問わず全ての人に保証することの重要性を強調している」とACSのニュースリリースで述べている。
[2024年8月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら