若年世代の老化が加速、がんリスク上昇の可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/05/06

 

 若い世代での老化が加速しており、それが若年発症型のがんリスクの上昇と関連している可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。1965年以降に生まれた人では、1950年から1954年の間に生まれた人に比べて老化が加速している可能性が17%高く、また、このような老化の加速は、55歳未満の成人における特定のがんリスクの増加と関連していることが示されたという。米ワシントン大学医学部のRuiyi Tian氏らによるこの研究結果は、米国がん学会年次総会(AACR 2024、4月5〜10日、米サンディエゴ)で発表された。

 Tian氏は、「若年成人の間で複数のがん種の罹患率が、米国だけでなく世界的に見ても上昇しつつある」とAACRのニュースリリースの中で述べている。同氏は続けて、「このリスク上昇の要因を解明することは、若い世代や将来の世代におけるがんの予防や早期発見を改善するための鍵となるだろう」と話す。

 今回の研究でTian氏らは、UKバイオバンク参加者14万8,724人の血液データを用いて、9種類のバイオマーカー(アルブミン、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、C反応性蛋白、グルコース、平均赤血球容積、赤血球分布幅、白血球数、リンパ球比率)を基に、それぞれの参加者の生物学的年齢を推定した。「老化の加速」は、生物学的年齢が歴年齢を上回っている場合と定義された。

 その結果、1965年以降に生まれた人では、1950年から1954年の間に生まれた人に比べて老化が加速している可能性が17%高いことが示された。次に、老化の加速と若年(55歳未満)発症型のがんとの関連を検討したところ、老化の加速が1標準偏差増加するごとに、肺がんリスクは42%、消化器がんリスクは22%、子宮体がんリスクは36%、それぞれ上昇するものと推定された。また、老化の加速と高齢発症型のがんとの関連も検討したところ、肺がんとの関連は有意ではなかったが、消化器がんでは16%、子宮体がんでは23%のリスク上昇と関連していた。

 Tian氏は、「老化の加速と若年発症型のがんリスクとの関係を検討したこの研究は、若年発症型のがんに共通する原因について新たな視点を提供するものだ」と話す。その上で同氏は、「得られた知見が検証されれば、生物学的老化を遅らせるための介入が、がん予防の新たな手段となり得る可能性も見えてくる。また、老化が加速している兆候が認められる若年者に対するスクリーニングの取り組みが、がんの早期発見に役立つ可能性もある」との見方を示している。

 研究グループは今後、若年成人の老化が加速している理由と、それががんリスクを高めている理由の解明を目的に研究を進めていく予定であると話している。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

[2024年4月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら