脳MRIに基づく新たな研究により、糖尿病が脳を老化させる可能性のあることが分かった。特に、血糖コントロールが良くない場合には、実際の年齢に比べて平均4歳、脳の老化が進んでいた。一方、健康的なライフスタイルにより、脳の若さを保つことができることも示唆された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のAbigail Dove氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に8月28日掲載された。
論文の筆頭著者であるDove氏は、「画像所見上、糖尿病患者の脳が実年齢に比べて高齢に見えるということは、通常の加齢プロセスからの逸脱を意味しており、認知症の早期警告サインと見なせる可能性がある」と述べている。同氏の指摘どおり、以前から2型糖尿病は認知症のリスク因子の一つとして認識されてきた。しかし、認知症発症前の人の脳に、糖尿病や前糖尿病がどのような影響を与えているのかという詳細については、不明点が少なくない。
この研究では、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者のうち、認知症でなく脳MRIデータのある40~70歳の成人3万1,229人が解析対象とされた。参加者は11年間の追跡調査中に最大2回の脳MRIスキャンを受けており、そのデータを基にAI技術によって1,079パターンの表現型を特定して、「脳年齢」が推定された。
その結果、前糖尿病の診断の記録がある人(43.3%)の脳年齢は、実際の年齢よりも平均0.5歳高齢と判定された。また、糖尿病患者(3.7%)の脳は、平均2.3歳高齢であった。さらに、HbA1cで層別化すると、HbA1c8%以上でコントロール不良の患者では平均4.2歳高齢と判定された。その一方、HbA1c7%未満でコントロール良好な患者の脳年齢は、1.7歳の差にとどまっていた。HbA1c7%以上8%未満の人の脳年齢の差は2.5歳だった。なお、糖尿病患者のうち男性や心血管代謝リスク因子を二つ以上持っている人は、脳年齢と実年齢との差がより顕著だった。
他方、この研究では、身体的に活発で喫煙・飲酒習慣のない人は、脳年齢が若いことも明らかになった。その差は、糖尿病や前糖尿病でない群(P<0.001)と、糖尿病患者群(P=0.003)で有意であった。前糖尿病群については、生活習慣による脳年齢の差が有意ではなかった(P=0.110)。
Dove氏はカロリンスカ研究所発のリリースの中で、「2型糖尿病の有病率は高く、さらに増加傾向にある。われわれの研究結果が、糖尿病や前糖尿病の人々の認知機能障害や認知症の予防に役立つことを願っている」と述べている。
[2024年8月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら