心房細動を有する心不全発症患者で死亡や入院のリスクが増加

新たに心不全を発症し、不整脈の一種である心房細動も有する患者の10人に4人は予後不良となる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米インターマウンテン・ヘルスの心臓血管疫学者であるHeidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表されるとともに、要旨が「Circulation」に11月11日掲載された。May氏は、「心房細動は、心不全をさらに厄介で治療が複雑な疾患にする可能性がある」と話している。
心房細動と心不全は、ともに有害事象のリスク増加と関連しているが、両方の診断を受けている患者は少なくない。今回の研究では、心不全の新規診断を受けた患者における心房細動の影響を、駆出率が40%未満に低下した心不全(HFrEF)と駆出率が40%以上に保持されている心不全(HFpEF)に分けて検討し、両群間でリスクに差があるかどうかが調査された。対象は、2000年から2019年の間に心不全を発症し、診断から30日以内に駆出率を測定され、1年間追跡されていた2万1,925人であった。心不全の内訳は、HFrEF患者7,931人(36.2%)、HFpEF患者1万3,994人(63.8%)であった。対象者の40.5%(8,879人)は、心房細動を併発しており、その罹患率はHFpEF患者の方がHFrEF患者よりも高かった(65.2%対34.8%)。心房細動併発患者の中では、HFpEF患者の方がHFrEF患者よりも高齢で(76歳対72歳)、女性が占める割合が高かった(52.7%対30.8%)。
解析の結果、心房細動を有する患者では、心房細動のない患者に比べて、HFpEFのリスクが有意に高いことが明らかになった(オッズ比1.11、P=0.001)。また、心房細動を有する患者では心房細動のない患者に比べて、1年後および3年後の死亡リスクと心不全による入院リスクも有意に高かった。心房細動を有するHFpEF患者とHFrEF患者を比較すると、1年後および3年後の死亡リスクに有意な差は認められなかったが、心不全による入院リスクはHFpEF患者の方がHFrEF患者よりも有意に高かった(1年後:ハザード比0.64、P<0.001、3年後:同0.73、P<0.001)。
このような結果を受けて研究グループは、新たに心不全と診断された患者に対し、心房細動の検査を行うよう医師に促している。May氏は、「心不全と心房細動を併発した患者に対しては、生活の質(QOL)を保つために、より積極的な治療計画が必要になる可能性があるため、医師は特に注意を払う必要がある」と述べている。
研究グループは、心不全と心房細動を併発した患者に対する最善の治療法を見出すために臨床試験の実施を計画していると話している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2024年11月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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