幼児期から小学3年生までにかけての子どもと教師の関係が良好であると、子どもの学習や発達に大きな利益をもたらす可能性のあることが、米オハイオ州立大学教育学・人間生態学准教授のArya Ansari氏らの研究で示された。Ansari氏は、「このような早期からのつながりは、学業成績だけでなく社会的および情緒的な発達や、教育の成功に重要な実行機能能力にも大きく影響する」と話している。この研究結果は、「Child Development」に11月20日掲載された。
Ansari氏らはこの研究で、2010~2011年に幼稚園児約1万4,370人を対象に開始された進行中の研究(Early Childhood Longitudinal Study)のデータを用いて、幼児期から小学3年生までにかけての子どもと教師との関係の質が、子どもの教育に及ぼす影響について検討した。この研究データには、5年生までの子どもの家庭および学校での経験に関するデータも含まれていたが、4・5年生時の子どもと教師との関係性についての報告がなかったため、今回の研究では3年生までの期間が対象とされた。子どもと教師との関係の質は、STRS(Student-Teacher Relationship Scale)の短縮版を用いて、親密さとコンフリクト(葛藤)の観点から評価し、両者の関係が子どもの学業成績、欠席率、実行機能、社会的行動の発達に与える影響を検討した。
その結果、幼稚園という早い段階で形成された子どもと教師との関係の質は、子どもの早期の学習と発達に大きなメリットをもたらす可能性のあることが明らかになった。また、両者の関係は低学年の期間を通じて重要であり、時間の経過とともに累積的な効果をもたらすことが確認された。全ての子どもが教師との親密な関係から利益を得ており、特に女子では、教師との関係においてコンフリクトや親密さに不足が認められた場合には、社会的に悪影響を受ける傾向のあることが示された。一方、男子はそのような影響を受けにくい傾向が認められた。
Ansari氏は、「この研究から得られた最も驚くべき知見は、子どもと教師の関係が、短期的にも長期的にも多様な集団で幅広いアウトカムに一貫して影響を及ぼすという点である」と、「Child Development」の発行元であるSociety for Research in Child Development(SRCD、児童発達研究学会)のニュースリリースの中で説明している。
Ansari氏は教師に対し、率直な意見を述べるように子どもを促し、彼らの話に積極的に耳を傾けるよう呼び掛けている。また、強い絆で結ばれた人間関係を築くために、教師は子どもの気持ちを認め、協力を促すべきであるとも付け加えている。なお、教師と子どもの絆は子どもたち一人一人の興味を育むことによって築かれることも、この研究で示された。
Ansari氏は、今回の研究結果について、「教師と子どもの関係のさまざまな側面がどのように学びを形成するのか、また、こうした関係が集団や環境によってどのように異なるのかを探る足掛かりとなるものだ」と話している。
[2024年11月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら