3歳の時に就寝時間が早かった子どもは、就寝時間が遅かった子どもと比べて、小学校1年生時点の学力が高く、勤勉さや思いやりを表す非認知能力も高いという研究結果を、神戸大学大学院小児科学分野の西山将広氏らの研究グループが「Scientific Reports」に11月27日発表した。同氏らは「幼児期の最適な睡眠習慣が、子どもたちの将来にプラスに働く可能性がある」と述べている。
幼児期の睡眠習慣が就学後の学力に与える影響は明らかになっていない。また、睡眠と学力の関連を調べた研究は数多くあるものの、ほとんどは横断的な研究に限られていた。そこで、研究グループは、兵庫県尼崎市による3歳児健診のデータと小学校1年生時の学力データ(国語および算数)を用い、幼児期の睡眠習慣と就学後の学力との関連を検討するため、縦断コホート研究を実施した。
研究では、2011年4月から2012年3月または2013年4月から2014年3月の間に尼崎市で生まれた子ども4,395人を対象に学童期まで追跡調査を行った。3歳時点の睡眠習慣については、3歳児健診データから就寝時間(18時、19時、20時、21時、22時および23時)と起床時間を収集。学力は、1年生時の国語と算数のテストの点数(100点満点)に基づき評価した。非認知能力については、自尊心(あなたは良い人間だと思いますか?)と勤勉さ(何事にも熱心に取り組みますか?)、思いやり(あなたは思いやりのある人ですか?)という3つの質問に対し、子どもたちに「はい」か「いいえ」で回答してもらった。
調査に参加した子どものうち、就寝時間は21時が46.5%(2,045人)と最も多く、22時(35.4%、1,555人)、18時~20時(11.5%、506人)が続いた。小学校1年生時のテストの平均点は、国語が68.7±19.9点、算数が67.2±22.5点だった。
解析の結果、3歳の時点で早く就寝した子どもほど、小学校1年生時の学力が高かった(就寝時間が「18時~20時」「21時」「22時」「23時以降」の児童の平均点は、国語はそれぞれ71.2±19.7点、69.3±19.4点、68.3±20.1点、62.5±21.3点、算数はそれぞれ70.3±21.8点、67.6±22.0点、66.9±22.6点、61.8±25.4点)。重回帰分析の結果、3歳時点の就寝時間は小学校1年生時の学力と関連していることが分かった。一方で、睡眠の長さ(「6~8時間」「9時間」「10時間」「11時間以上」)と学力の間には有意な関連は認められなかった。
非認知能力との関連については、3歳時点の就寝時間は自尊心との関連は見られなかったが、就寝時間が遅い子どもほど勤勉さは低下し(就寝時間18~20時に対するオッズ比は、「21時」1.98、「22時」2.15、「23時以降」2.33)、思いやりが弱かった(同じくオッズ比は「22時」1.76、「23時以降」2.15)。
研究グループは、今回の研究には、転居などの理由で小学校まで追跡できなかった子どもが多かったこと、非認知能力は子どもたちの自己申告に基づいていることなどの限界があるとしながらも、「子どもの性別や3歳時点の精神発達、家庭の経済状況とは関係なく、3歳時点の就寝時間は小学校1年生時の国語と算数の学力と関連していることが分かった。また、幼児期の就寝時間の早さと非認知能力の高さとの間には正の関連があることも初めて示された」と結論付けている。
[2024年1月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら