GLP-1受容体作動薬は目に悪影響を及ぼす?

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/03/03

 

 減量薬として広く使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、まれに視力障害を引き起こす可能性のあることが分かってきた。しかし、新たな小規模研究によると、現時点では、そのような目の合併症の原因がGLP-1RAであるのかどうかについての結論は出せないという。米ユタ・ヘルス大学のジョン・A・モラン・アイセンターのBradley Katz氏らによるこの研究は、「JAMA Ophthalmology」に1月30日掲載された。

 この研究を実施するきっかけとなったのは、論文の筆頭著者であるKatz氏が、ある患者において、GLP-1RAのセマグルチドの使用開始後に片方の目の視力が突然、痛みもなく低下したことに気付いたことだったという。患者は一時的にセマグルチドの使用を中止したが、使用を再開したところ、もう片方の目にも視力低下が起こったという。不安を感じたKatz氏は、メーリングリストを通じて他の眼科医に同じようなことが起きていないかを尋ねた。その結果、GLP-1RAの使用後に目の視神経周辺の血管の機能障害など視力を低下させるような問題が起こった症例として、9例の報告が寄せられた。

 そこでKatz氏らは、これらの9人の症例(平均年齢57.4歳、範囲33〜77歳、女性56%)について検討した。症例はいずれも、肥満や糖尿病の治療薬としてセマグルチド(商品名ウゴービ、オゼンピック)やチルゼパチド(商品名マンジャロ、ゼップバウンド)などのGLP-1RAを使用していた。

 その結果、9人のうち7人は非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)として知られる疾患を発症していた。これは、視神経に十分な血液が供給されないことで起こる疾患だ。NAIONでは、視神経の損傷から視野の部分的な欠損が突然起こり、それが恒久的に残る可能性がある。他の1人はGLP-1RAの使用後に視野の一部が見えにくくなる傍中心窩急性中間層黄斑症を、残る1人は視神経の端に炎症が起こる両側性視神経乳頭炎を発症していた。

 Katz氏らは、これまでに、極めてまれではあるが勃起不全治療薬や不整脈治療薬の使用に関連してNAIONを発症した例が報告されていると指摘している。その一方で、糖尿病や心臓病などの慢性疾患や肥満も視力障害を引き起こす可能性のあることが知られている。したがって、視力障害に関連しているのがGLP-1RAなのか、あるいは患者が抱えていた基礎疾患の一つなのかについては不明であるとKatz氏らは述べている。また、論文の共著者である米ニューヨーク州立大学バッファロー校神経学分野のNorah Lincoff氏は、「まれなケースではあるが、GLP-1RAの使用に伴う突然の急激だが正常範囲内の血糖値の低下が目を脆弱にすることもある」と話す。

 Lincoff氏は、「患者へのメッセージとしては、これらの薬が虚血性視神経障害のリスクを高めるかどうかに関しては、まだ調査中の段階にあるということだ」と述べている。また、医師に対しては、「GLP-1RAを使用中の患者から目のかすみや視力低下があるとの連絡があった場合には、できるだけ早く眼科医に診てもらうようにしてほしい。目の症状は、グルコースの変動のせいかもしれないが、より深刻な問題の兆候である可能性もある」と助言している。

 一方、すでにGLP-1RAを使用している人に対して研究グループは、この薬剤による視力障害の発生は極めてまれであり、パニックに陥る必要はないが、万一、問題が起こった場合には主治医に確認する必要があるとしている。

[2025年2月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら