手術中に強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルとスフェンタニルを使用することは、手術後の望ましくない「疼痛経験」と独立して関連することが示された。「疼痛経験」とは、単なる痛みの強度だけでなく、感情的・精神的・認知的な側面を含めた包括的な概念である。ニース・パスツール病院大学病院センター(フランス)のAxel Maurice-Szamburski氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に2月25日掲載された。
Maurice-Szamburski氏は、「オピオイド鎮痛薬は手術後の疼痛軽減に役立つことがあるが、手術中の使用、特に、強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルやスフェンタニルの使用は、逆に疼痛を増大させる可能性がある」と述べている。
この研究では、フランスの5カ所の総合教育病院で、全身麻酔下で選択的手術を受けた18〜70歳の成人患者971人(年齢中央値49.6歳、65歳以下88%、男性48%)のデータの二次解析が行われた。対象者の手術前の不安は、アムステルダム術前不安・情報尺度(APAIS)により、また、疼痛、睡眠の質、ウェルビーイングは、手術の前後に視覚アナログ尺度(VAS)を用いて測定されていた。主要評価項目は、手術後1日目にEvaluation du Vecu de l'Anesthesie Generale(EVAN-G)質問票で測定した患者の疼痛経験とし、EVAN-G疼痛次元の25パーセンタイル未満の場合を「不良な疼痛経験」と定義した。手術の種類としては、整形外科または脊椎(37%)、耳鼻咽喉(29%)、消化器(15%)が多かった。
271人(27.9%)が手術後の不良な疼痛経験を報告していた。多変量解析では、手術中のレミフェンタニルとスフェンタニルの使用が、手術後の不良な疼痛経験の独立した予測因子であることが示された。これらの薬剤の使用により不良な疼痛経験が生じるオッズ比は26.96(95%信頼区間2.17〜334.23、P=0.01)と推定された。この結果について研究グループは、「これは、『オピオイド誘発性痛覚過敏』と呼ばれる既知の現象と一致している。高用量のオピオイドにさらされた患者では、痛みの刺激に対する感受性が高まる可能性がある」との見方を示している。
また、米国麻酔科学会(ASA)による全身状態分類であるASA-PS(ASA physical status)分類でクラスIIIに分類される重篤な全身疾患を有すること(オッズ比5.09、95%信頼区間1.19〜21.81、P=0.028)、手術後の抗不安薬の使用(同8.20、2.67〜25.20、P<0.001)、手術後の健忘(同1.58、1.22〜2.06、P=0.001)も、不良な疼痛経験のリスクを高める要因であることが示された。一方、手術前に鎮痛薬を使わないこと(同0.49、0.25〜0.95、P=0.035)と整形外科の手術(同0.29、0.12〜0.69、P=0.005)は不良な疼痛経験のリスクを低下させる要因であった。
研究グループは、「痛みは強さ以外の側面が見落とされがちだが、手術後の急性疼痛が慢性疼痛へ移行するリスクを予測する上ではそれらが非常に重要だ。したがって、不良な疼痛経験の要因を理解することにより、痛みの強度の管理だけにとどまらない、周術期ケアの新たな選択的ターゲットが明らかになる可能性がある」と述べている。
[2025年2月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら