日本人の小学5年生から中学2年生の女子では、スマホを含む電子機器の画面を見るスクリーンタイムが長いほど肥満リスクが有意に高まるという研究結果を、新潟大学血液・内分泌・代謝内科学研究室の池田和泉研究員、藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループが「Endocrine Journal」に1月11日発表した。1日のスクリーンタイムの総計が4時間以上、スマホは2時間以上と一定の長さを超えるグループにおいても、身体活動や睡眠時間を十分にとることで肥満リスクを低減できる可能性も示された。一方で、男子ではスクリーンタイムと肥満の関連は認められなかった。
スクリーンタイムの増加は小児の肥満リスクを高めることが報告されている。しかし、先行研究の多くはテレビやパソコン、電子ゲームを対象としたもので、スマホの使用が小児肥満に与える影響を定量的に検討した研究や、身体活動や睡眠時間などの生活習慣因子の影響を考慮した研究は限られていた。そこで、研究グループは、新潟県内の小中学生を対象とした横断研究(NICE EVIDENCE Study 4)を行い、スクリーンタイムをスマホとそれ以外の電子機器に分け、生活習慣因子を考慮した上で、肥満との関連を男女別に検討した。
研究は、2018~2019年の間に、新潟県阿賀野市と三条市が実施する生活習慣病予防事業に参加した10~14歳の小児2,242人(平均年齢11.8歳、うち女子1,278人)を対象とした。肥満は、国際肥満タスクフォースの定義に従って診断した。自記式質問票を用い、スクリーンタイムや身体活動量、睡眠時間を調査した。ロジスティック回帰モデルを用い、スクリーンタイムと肥満との関連を分析した。
男子の14.5%、女子の9.9%が肥満と診断された。全体の30.1%がスマホを使用しており、女子の方が使用率は高かった(女子34.5%、男子25.3%)。ロジスティック回帰分析の結果、女子では、スクリーンタイムの総時間が1日に4時間以上5時間未満、またはスマホを3時間以上4時間未満あるいはスマホ以外の電子機器を2時間以上使用すると、それぞれ2時間未満、非使用、1時間未満の場合と比べて肥満が約3倍有意に増加した。一方で、男子ではこのような関連は認められなかった。
また、女子では、1日にスマホを3時間以上かつスマホ以外の電子機器を2時間以上使用すると、それぞれ3時間未満かつ2時間未満の場合と比べて肥満のオッズ比は6.79倍に上昇していた。スマホまたはスマホ以外の電子機器のいずれかが基準を満たしても、肥満のオッズ比は約3倍高値であった。スクリーンタイムの総時間が4時間以上5時間未満、またはスマホの使用時間が2時間以上の女子では、身体活動量が60分(23メッツ・時)/週以上または睡眠時間が8.5時間/日以上であれば、肥満のリスクは有意に上昇しなかった。
スクリーンタイムと肥満の関連に男女差が見られた理由として、池田氏らは「女子は男子と比べて座位時間が長く、身体活動量が少なかったことが影響したのではないか」と指摘した。また、肥満の原因として、女子は座位時間の長さが挙げられるのに対し、男子では過剰なエネルギー摂取の方が重要な可能性があるとしている。
以上から、研究グループは「小中学生の女子では、スマホなどのスクリーンタイムの長さと肥満リスクは有意に関連することが明らかになった。女子の小児肥満を予防するためには、スマホの使用は1日に3時間未満、スマホ以外の電子機器は2時間未満、スクリーンタイムの総時間は4時間未満に抑えながら、十分な運動と睡眠時間をとることが必要だと考えられる」と述べている。
[2024年2月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら