新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。
コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。
この研究は、岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来を2021年2月15日~2023年3月31日に受診した、コロナ後遺症の女性患者(18~50歳)を対象に行われた。コロナ後遺症の定義は、感染から4週間以上にわたり何らかの症状が持続している状態とした。患者の診療記録より、月経情報、健康関連QOL、抑うつ症状、ホルモン検査などの臨床データが解析された。
研究対象の女性223人のうち、月経異常を訴える女性は44人(19.7%、年齢中央値42.5歳)で、月経異常のない女性(同38歳)よりも有意に年齢が高かった。44人中34人(77.3%)は、オミクロン株の流行期(2022年1月以降)に感染していた。月経異常の中で最も多い症状は月経周期の不順(63.6%)であり、次いで月経痛の悪化(25%)、過多月経(20.5%)、更年期症状(18.2%)、月経前症候群(15.9%)などの症状が見られた。
また、月経異常のある女性では月経異常のない女性に比べて、倦怠感(75対58.1%)や抑うつ気分(9.1対1.1%)を伴う人の割合が有意に高かった。さらに、健康関連QOLの評価指標(FASおよびEQ-5D-5L)による評価では、月経異常のある女性の方が、倦怠感やQOLが有意に悪化していた。
ホルモン検査では、月経異常のある女性の方が、血清コルチゾール値(中央値8.5対6.7μg/dL)が有意に高かった。その他の検査結果に有意差はなかったものの、月経異常のある女性の方が、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)値(同28.7対8.3mIU/mL)は高く、血清エストラジオール(E2)値(同12対17.95pg/mL)は低い傾向が認められた。
研究結果について著者らは、「コロナ後遺症は日本人女性の月経にも影響を及ぼし、QOLとメンタルヘルスの悪化につながるというエビデンスを提供するものである」と結論付けている。コルチゾール値が高かったことに関しては、月経異常などによるストレス状態が存在し、視床下部-下垂体-性腺軸を介してE2の産生障害につながる可能性を指摘。月経状態は心身の状態に影響を及ぼし得ることから、「正常な月経状態を維持することは重要である」と総括している。
[2024年3月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら