心血管疾患(CVD)で入院した患者のうち、入院前にアクティブな趣味を持っていた患者は、退院時のフレイルのリスクが低いという研究結果が発表された。一方で、入院前に趣味があったとしても、その趣味がアクティブなものでなければ、リスクの低下は見られなかったという。これは飯塚病院リハビリテーション部の横手翼氏らによる研究であり、「Progress in Rehabilitation Medicine」に2月22日掲載された。
趣味を持つことと死亡や要介護のリスク低下との関連を示す研究はこれまでに報告されており、入院中の運動不足で身体機能が低下しやすいCVD患者でも、趣味を持つことが身体機能の維持やフレイルの予防に役立つと考えられる。そこで著者らは、入院前に行っていた趣味と退院時のフレイルとの関連について、趣味の内容にも着目して検討した。
研究対象は、2019年1月~2023年6月に飯塚病院に入院し、その後自宅に退院したCVD患者のうち、入院前から日常生活の介助を要する患者などを除いた269人(平均年齢68.4±11.5歳、男性72.2%)。対象患者のCVD・手術には、心不全、心筋梗塞、狭心症、冠動脈バイパス術、大動脈弁置換術、僧帽弁形成術、大動脈グラフト置換術が含まれた。
患者の状態が安定した後、入院前の趣味に関する情報を入手し、身体活動を伴う趣味(スポーツ、買い物、旅行など)を「アクティブな趣味」、それ以外の趣味(テレビ・映画鑑賞、スポーツ観戦、楽器演奏など)を「非アクティブな趣味」、趣味のない場合は「無趣味」に分類した。フレイルについては退院前日に、日本語版フレイル基準(J-CHS基準)の5項目(筋力低下、歩行速度低下、疲労感、体重減少、身体活動低下)により評価。3項目以上に該当する人を「フレイル」、1~2項目に該当する人を「プレフレイル」に分類した。
その結果、無趣味群(77人)ではプレフレイルの割合が61.4%、フレイルの割合が22.9%、非アクティブな趣味群(64人)では同順に53.2%、37.1%、アクティブな趣味群(128人)では同順に57.4%、13.9%だった。
次に、患者背景の差(年齢、性別、BMI、疾患、入院期間、就労状況、入院時の左室駆出率、入院前のフレイル)を調整して解析すると、アクティブな趣味群は、プレフレイルまたはフレイルのオッズ低下と有意に関連していることが明らかとなった(無趣味群と比較したオッズ比0.41、95%信頼区間0.17~0.90)。一方、非アクティブな趣味群ではこの関連は認められなかった(同1.56、0.52~4.64)。また、アクティブな趣味群では無趣味群と比べて、J-CHS基準の5項目のうち、歩行速度低下、疲労感、身体活動低下のオッズが有意に低かった。
以上から著者らは、「入院前にアクティブな趣味を持っていた患者は、趣味のない患者と比べて退院時にフレイルとなるリスクが低かった。一方で、非アクティブな趣味を持っていた患者では、リスクの低下は認められなかった」と結論。また、アクティブな趣味と疲労感の低下が関連していたことの説明の一つとして、アクティブな趣味を持つことが、入院中のリハビリテーションや理学療法への動機付けとなり、身体機能の維持に寄与する可能性があるとしている。
[2024年4月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら