>慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者は、転倒リスクがおよそ1.5倍に増大するようだ。米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合内科・プライマリ・ケア部門のSuzanne G. Leveille氏らによる試験で明らかになった。高齢者の慢性痛と転倒リスクについての研究結果はこれまでほとんど見られていない。JAMA誌2009年11月25日号掲載より。
日常生活自立の70歳以上、約750人を18ヵ月追跡
Leveille氏らは2005年9月~2008年1月にかけて、自宅で自立した生活をしている70歳以上高齢者749人について検討した試験「MOBILIZEボストンスタディ」を行った(MOBILIZE:Maintenance of Balance, Independent Living, Intellect, and Zest in the Elderly)。追跡期間は18ヵ月だった。
追跡期間中に発生した転倒件数は、1,029件だった。慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある300人の、年齢補正後の転倒率は、1.18件/人・年(95%信頼区間:1.13~1.23)だった。慢性骨格痛が1ヵ所のみの181人の同転倒率は、0.90件/人・年(同:0.87~0.92)だった。また、関節痛の全くない267人の同転倒率は、0.78件/人・年(同:0.74~0.81)だった。
強い痛みのある人の転倒リスクも5割増に
転倒リスクが最も高かったのは、慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある群で、痛みが全くない群に比べて、転倒に関する補正後発生率は1.53倍(95%信頼区間:1.17~1.99)だった。
また、痛みの程度(3分位)と転倒発生との比較では、痛みが強い3分位群の補正後発生率が、低い3分位群に比べて1.53倍(同:1.12~2.08)だった。活動の妨げの程度(3分位群)で検討した場合も、強い群が低い群に比べ1.53倍(同:1.15~2.05)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)