ザナミビル(商品名:リレンザ)、オセルタミビル(同:タミフル)といったノイラミニダーゼ阻害薬の、健康成人のインフルエンザ症状に対する効果は「ささやかなものである」との報告が、Tom Jefferson氏らコクラン・急性呼吸器感染症共同研究グループによって発表された。ノイラミニダーゼ阻害薬(特にオセルタミビル)は世界的な抗インフルエンザ薬となり、インフルエンザ症状に対し予防効果があり、症状発現から48時間以内に服用すれば疾患期間が1日短くなると言われる一方、合併症への効果や毒性が議論の的にもなっている。BMJ誌2009年12月12日号(オンライン版2009年12月8日号)より。
コクランデータベースから20試験を抽出・解析
Jefferson氏らは、2005コクラン・レビューを更新するため、ノイラミニダーゼ阻害薬の効果(健康成人におけるインフルエンザ症状および感染拡大、合併症の予防と改善)と、有害反応の頻度推計を目的に、システマティックレビューとメタ解析を行った。論文検索は、コクランライブラリー2009(issue 2)、急性呼吸器感染症研究グループ専門レジスター、Medline(1950年~2009年8月)、Embase(1980年~2009年8月)、市販後調査データ、比較安全コホート研究から行った。選択基準は、季節性インフルエンザに罹患した健康成人に関するノイラミニダーゼ阻害薬の無作為化プラセボ対照試験とし、予防4試験、治療12試験、曝露後予防4試験の計20試験を選択した。
主要評価項目は下気道感染症または類する症状の継続期間と発現率、有害事象とした。2人のレビュアーが基準を適用して、試験の質の評価、データ抽出を行った。データは予防、治療、有害事象ごとに、アウトカムと投与量でさらに細分化され解析された。
合併症に効果なく、副作用データは過少報告か?
予防に関しては、ノイラミニダーゼ阻害薬は、インフルエンザ様疾患または無症候性インフルエンザに対する効果は認められなかった。
診断がついたインフルエンザでの経口オセルタミビルは、75mg/日で有効率61%(リスク比:0.39、95%信頼区間:0.18~0.85)、150mg/日で73%(0.27、0.11~0.67)だった。吸入型のザナミビルは、10mg/日で62%(0.38、0.17~0.85)だった。
曝露後予防では、オセルタミビルは家庭で行われた2試験でそれぞれ58%(95% CI 15~79%)と84%(49~95%)の有効率だった。
ザナミビルも同様の試験が行われ、インフルエンザ様疾患が軽減するまでの時間に関するハザード比は、オセルタミビル1.20(1.06~1.35)、ザナミビル1.24(1.13~1.36)だった。
合併症に関する試験(未発表8試験)は不適格として除外された。残った試験データのエビデンスから、オセルタミビルがインフルエンザに関連した下気道合併症を緩和しなかったこと(リスク比:0.55、95%信頼区間:0.22~1.35)、また嘔気を誘発することも明らかになった(オッズ比:1.79、95%信頼区間:1.10~2.93)。なお、研究グループは、市販後調査の「ごくまれ」とする有害事象のエビデンスは、質が悪いか、過少報告された可能性があると指摘している。
以上を踏まえ研究グループは、「ノイラミニダーゼ阻害薬の効果はささやかで、曝露後のインフルエンザには効果的だが、これはインフルエンザ様疾患の一部に過ぎず、このアウトカムでは効果的な治療薬とは言えない。季節性インフルエンザの症状を軽減させるオプションと考えるべき」と述べている。また、良質なデータが不足していることは、オセルタミビルのインフルエンザ合併症予防に関する過去の所見を蝕んでしまった。それによって生じた疑念を解消するには独立した無作為化試験が必要だと結論づけている。