血漿レプチン濃度が高い人は、低い人に比べ、認知症やアルツハイマー病の発症リスクが低く、脳の高齢化の指標となる大脳容積も大きいことが明らかになった。米国ボストン大学神経内科部門のWolfgang Lieb氏ら「Framingham Heart Study」のグループメンバーが、JAMA誌2009年12月16日号で発表した。これまで動物モデルにおいては、レプチンが加齢やアルツハイマー病による記憶機能改善に関係があることが報告されていた。
785人を約8年追跡
Lieb氏らは、Framingham Heart Studyの被験者で認知症の認められなかった785人について、中央値8.3年(0~15.5年)追跡した。被験者の平均年齢は79歳(標準偏差5歳)で、うち62%が女性だった。
血漿レプチンを採取して約7.7年後の1999~2005年にかけて、被験者のうちその時点で認知症の認められない198人について、容積測定脳MRIを行い、大脳容積と側頭角容積を測定した。その後2007年12月31日まで、認知症、アルツハイマー病の発症を追跡した。
レプチン対数値の1標準偏差増加で、認知症発症リスクは0.68倍に
追跡期間中(中央値8.3年)に認知症を発症したのは111人で、そのうちアルツハイマー病は89人だった。
多変量解析の結果、血漿レプチン濃度が高いほど、認知症発症リスクが低かった。レプチン対数値が1標準偏差増加することによる認知症発症に関するハザード比は0.68(95%信頼区間:0.54~0.87)、アルツハイマー病発症に関する同ハザード比は0.60(同:0.46~0.79)だった。
12年間追跡した際のアルツハイマー病発症の絶対リスクは、男女別の血漿レプチン濃度が最も低い四分位範囲群では25%なのに対し、最も高い四分位範囲群では6%だった。
さらに、血漿レプチン濃度が1標準偏差増加することにより、大脳容積は増加し、側頭下角容積は低下する傾向があることがわかった。ただし、血漿レプチン濃度と側頭下角容積の関連については、有意差は認められなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)