膵頭部がん手術を受ける患者へのルーチンな術前胆道ドレナージは、合併症のリスクを増大することが、オランダ・アムステルダムにあるAcademic Medical CenterのNiels A. van der Gaag氏らによって明らかにされた。本手技は、膵頭部の腫瘍による閉塞性黄疸がある患者の術後アウトカムを改善するために導入されたが、その有益性については明らかにされていなかった。NEJM誌2010年1月14日号掲載より。
多施設共同無作為化試験で、術前胆道ドレナージ実施群と未実施群の転帰を検証
Gaag氏らは、13施設(大学病院5、地域病院8)において、術前胆道ドレナージを行った群と未実施群とを比較する多施設共同無作為化試験を行った。
被験者は、閉塞性黄疸を伴い、ビリルビン値が40~250μmol/L(2.3~14.6mg/dL)の18~85歳の患者202例で、診断後4~6週の間に内視鏡的胆道ドレナージ(主としてERCP;内視鏡的逆行性胆道膵管造影法による)を行ってから膵頭部がん手術を行う群(術前胆道ドレナージ群:96例)と、診断後1週間以内に膵頭部がん手術を行う群(早期手術群:106例)に無作為に割り付けられ追跡された。
主要転帰は、無作為化後120日以内の重篤な合併症の発症率とした。
ドレナージ実施群の重篤な合併症リスクは、未実施群の約2倍
重篤な合併症が起きたのは、早期手術群39%(37例)だったのに対し、術前胆道ドレナージ群は74%(75例)で、相対リスクは0.54(95%信頼区間:0.41~0.71、P<0.001)だった。
術前胆道ドレナージ群の94%(96例)が、ドレナージ成功まで1回以上の手技を受けた。そしてドレナージに関する合併症は46%(47例)だった。
がん手術に関する合併症は、早期手術群では37%(35例)だったのに対し、術前胆道ドレナージ群では47%(48例)に起きた。相対リスクは0.79(95%信頼区間:0.57~1.11、P=0.14)だった。
死亡率と入院期間について、両群に有意差はみられなかった。
(医療ライター:武藤まき)