ここ10年ほどで、米国医師の労働時間は約7%減少する一方、報酬は25%も減ってきていることが明らかになった。労働時間の減少率は、レジデントを除外すると45歳未満の若手、非勤務医が大きかった。米国Dartmouth College経済学部門のDouglas O. Staiger氏らが、1976~2008年の米国勢調査局の人口調査に基づく、約11万7,000人の医師について調べた結果で、JAMA誌2010年2月24日号で発表した。
労働時間減少率はレジデントが9.8%、非レジデントが5.7%
Staiger氏らは、11万6,733人の医師の労働時間について、全体の傾向と、レジデントか否か、性別、年齢、病院勤務か否かなどに分けて、それぞれの傾向を分析した。また、全米の医師報酬の傾向についても分析した。
その結果、医師の労働時間は1990年代初頭まで一定していた。しかしその後、医師全体の労働時間は、1996~1998年の週平均54.9時間から、2006~2008年の同51.0時間へと、7.2%(95%信頼区間:5.3~9.0、p<0.001)減少した。
そのうち、レジデント以外の医師の労働時間の同期間減少率は5.7%(同:3.8~7.7、p<0.001)だった。一方レジデントについては、2003年に導入されたレジデントの勤務時間制限により、同期間の労働時間減少率は9.8%(同:5.8~13.7、p<0.001)と上回っていた。
労働時間減少は医師報酬減少と関連か
レジデント以外の医師で、同期間労働時間減少率が大きかったのは、45歳未満の若手で7.4%(同:4.7~10.2、p<0.001)、病院外勤務が同6.4%(同:4.1~8.7、p<0.001)だった。
一方、同期間労働時間減少率が小さかったのは、45歳以上で3.7%(同:1.0~6.5、p=0.008)、病院内勤務の医師で4.0%(同:0.4~7.6、p=0.03)だった。
医師報酬については、インフレ補正を行った後、1995~2006年にかけて全国で25%減少していた。これは医師の労働時間減少が見られた期間と一致していた。
さらに2001年における都市部の医師の労働時間と報酬について調べたところ、医師報酬の低い地域の医師労働時間は週当たり49時間と、他地域の同52時間に比べ有意に少なかった(p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)