15歳までの子どもにインフルエンザ予防接種を行った地域で、未接種の住民も含めた感染率が、およそ6割減少していたという。カナダMcMaster大学のMark Loeb氏らが、前向き無作為化試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月10日号で発表した。
49集落の子ども約950人を無作為に割り付け
試験は、2008年9~12月にかけて、49のハタライト教徒の集落に住む、合わせて947人の生後36ヵ月から15歳の子どもを、集落単位で、季節性インフルエンザ予防接種群(25集落・接種児502人・試験解析された住民1,773人)、またはA型肝炎の予防接種群(対照群、24集落・接種児445人・試験解析された住民1,500人)に無作為に割り付け行われた。なお、いずれの予防接種を受けなかった住民は、合わせて2,326人だった。
接種後、同地域のインフルエンザ発症について、2008年12月28日~2009年6月23日にかけて追跡した。インフルエンザ発症については、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法で確認した。
子どもへの予防接種実施による集落全体の保護効果は59%
結果、接種児以外でインフルエンザを発症した人は、インフルエンザ予防接種群では1,271人中39人(3.1%)だった。これに対し対照群のA型肝炎予防接種群では、1,055人中80人(7.6%)で、保護効果(protective effectiveness)は61%(95%信頼区間:8~83%、p=0.03)だった。
接種児も含めた全体のインフルエンザ発症についてみてみると、インフルエンザ予防接種群では1,773人中80人(4.5%)だったのに対し、対照群では1,500人中159人(10.6%)で、保護効果は59%だった(同:5~82、p=0.04)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)