手術適応の症候性の頸動脈狭窄に対する第一選択治療は、現時点では頸動脈内膜切除術(CEA)とすべきことが、英国University College London神経学研究所のMartin M Brown氏らが進めている無作為化試験(ICSS試験、http://www.cavatas.com/)の中間解析で示された。CAVATAS試験では血管内治療(ステント使用/非使用の血管形成術)が有用な可能性が示唆されたが、CEAの主要な合併症(脳神経傷害、重度血腫)は回避しうるものの術後30日以内の脳卒中/死亡の発生率はいずれの治療でも高かった。また、SPACE試験ではCEAに対する頸動脈ステント留置術(CAS)の非劣性が示せず、EVA-3S試験では周術期の脳卒中/死亡の発生率がCASよりもCEAで有意に低かったため、いずれの試験も早期中止となっている。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。
安全性に関する中間解析
ICSS(International Carotid Stenting Study)試験の研究グループは、CASとCEAの有用性を比較する国際的な多施設共同無作為化対照比較試験を進めており、今回の中間解析では安全性に関する結果を報告した。
症候性の頸動脈狭窄の患者が、CASあるいはCEAを施行する群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者、研究者ともにマスクされず、患者のフォローアップは治療に直接には関与しなかった医師が独立に行った。
主要評価項目は術後3年間における致死的あるいは廃疾性の脳卒中(disabling stroke)の発生率であり、現時点では解析結果は出ていない。安全性に関する中間解析の主要評価項目は、術後120日間における脳卒中、死亡、治療関連心筋梗塞の発生率であった。
安全性の主要評価項目、CAS群8.5%、CEA群5.2%で有意差あり
2001年5月~2008年10月までに、ヨーロッパ、オセアニア、カナダの50施設から1,713例が登録され、CAS群に855例が、CEA群には858例が割り付けられた。割り付け直後に試験を中止した3例(CAS群:2例、CEA群:1例)はintention-to-treat解析には含めなかった。
無作為割り付け後120日までの死亡および廃疾性脳卒中の発生率は、CAS群が4.0%(34例)、CEA群は27例(3.2%)であり、両群間に有意な差はなかった(ハザード比:1.28、95%信頼区間:0.77~2.11)。
120日までの脳卒中、死亡、治療関連心筋梗塞の発生率は、CAS群が8.5%(72例)、CEA群は5.2%(44例)であり、CAS群で有意に高かった(ハザード比:1.69、95%信頼区間:1.16~2.45、p=0.006)。
脳卒中はCAS群65例、CEA群35例(ハザード比:1.92、95%信頼区間:1.27~2.89)、全死亡はそれぞれ19例、7例(ハザード比:2.76、95%信頼区間:1.16~6.56)にみられ、いずれもCAS群で有意に多かった。治療関連心筋梗塞は、CAS群で3例にみられすべて死亡したのに対し、CEA群で認めた4例はいずれも非致死的であった。
脳神経麻痺は、CAS群では1例のみであったが、CEA群では45例に認めた。血腫の頻度も、それぞれ31例、50例と、CAS群で有意に少なかった(p=0.0197)。
これらの結果により、著者は「頸動脈内膜切除術との比較における頸動脈ステント留置術の有用性を確立するには、長期のフォローアップを完遂する必要がある」とし、「それまでは、手術適応の症候性頸動脈狭窄患者に対する治療としては頸動脈内膜切除術を選択すべきである」と結論している。
(菅野守:医学ライター)