心不全患者に対し、服薬や塩分摂取制限などに関する自己管理について、カウンセリング・プログラムを強化しても、死亡率や入院率の低下にはつながらないことが報告された。米国ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)予防医療部門のLynda H. Powell氏らが、約900人の患者を対象に行った無作為化比較対照試験「HART」(Heart Failure Adherence and Retention Trial)で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。
2時間のグループセッションを1年間に18回実施
単一施設複数病院一部盲検で行われたHARTでは、2001年10月~2004年10月にかけて、軽度~中等度の心不全患者902人について試験を開始した。被験者の心臓収縮機能は、減少・維持の両者が含まれた。
研究グループは、被験者を無作為に2群に分け、一方の群には、服薬遵守や塩分摂取制限、適度な運動やストレス管理といった自己管理について、1回2時間、約10人でのグループカウンセリングを、1年間にわたり18回行った。その際、心不全の自己管理に関するパンフレット(18シートからなるものを毎回1シートずつ)も配布した。
もう一方の群には、同様の18シートからなるパンフレットを郵送し、電話によるフォローアップを行った。
被験者の平均年齢は63.6歳、うち女性は47%で、人種/民族を申告した人が40%、年間世帯所得が3万ドル未満が52%を占めた。収縮機能の維持が認められたのは23%だった。追跡期間の中央値は2.56年。
主要評価項目は、追跡期間中央値2.56年間の死亡および心不全による入院とした。
死亡または心不全による入院の発生率は低下せず
結果、追跡期間の死亡または心不全による入院は、自己管理介入群の163件(40.1%)に対し、対照群171件(41.2%)と、両群に有意差はみられなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.72~1.26)。
また、副次エンドポイントとした、死亡、心不全による入院、理由を問わない入院、QOLのいずれについても、両群で有意差は認められなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)